記事リリース日:2018年2月19日 / 最終更新日:2019年1月21日
オンライン診療(遠隔診療)の海外事情
【うつ病治療コスト56%減】も
オンライン診療(遠隔診療)を開発したのは、残念ながら日本ではありません。1950年にはアメリカでテレビ会議システムを使った遠隔医療が行われていたそうです。その後、インターネットが市民権を得るようになった1990年ごろからアメリカやカナダでオンライン診療(遠隔診療)が充実し始めました。
また「生活の電子化」が進んでいるフィンランドでもオンライン診療(遠隔診療)が浸透しています。
日本の「オンライン診療(遠隔診療)の将来像」を予測するには、欧米の先進事例を知っておく必要があるでしょう。
国土の広い国や電子化が得意な国で普及
首相官邸が公開している資料によると、アメリカは僻地の地域開発の一環としてオンライン診療(遠隔診療)を実施しました。アメリカの医療保険は原則、民間の保険会社が運営しているのですが、精神疾患の治療ではほとんどの保険会社がオンライン診療(遠隔診療)での治療を承認しています。
人口密度が低く国土が広い国ではオンライン診療(遠隔診療)のメリットがいかんなく発揮できます。そこでカナダでも積極的にオンライン診療(遠隔診療)を取り入れています。
カナダでまず進められたのは医師と医師の間のオンライン診療(遠隔診療)でした。患者と対面して治療をしている医師が、病理検査や画像検査の結果を専門の医師に送信し、アドバイスを受けるという形態です。
これをDtoDモデルオンライン診療(遠隔診療)と言います。DはドクターのDで、医師と医師の間でオンライン診療(遠隔診療)を使うという意味です。
カナダでは、歯科、眼科、心臓外科でもDtoDモデルオンライン診療(遠隔診療)が行われています。
フィンランドの医療機関の電子カルテの普及率は100%に達しています。
電子カルテとは、病院が入手した患者情報をすべてパソコンの中に取り込むシステムのことです。患者の病歴や入院期間中の言動、検査結果、医師の見立てや看護師の観察記録などがパソコンに入っていると、医療従事者の情報の共有がしやすくなります。
このように医療の電子化に積極的なフィンランドではオンライン診療(遠隔診療)との相性が良いようで、オンライン診療(遠隔診療)システムを使った画像診断の利用は86%にも達します。
またフィンランドでは医師と患者の間のオンライン診療(遠隔診療)「DtoPモデル」も普及しています。Pはペイシャント(患者)のPで医師と患者の間で使うオンライン診療(遠隔診療)という意味です。
ちなみに日本のオンライン診療(遠隔診療)ではDtoDもDtoPも両方とも実施されています。
糖尿病、心不全、うつ病の治療で実績
欧米でのオンライン診療(遠隔診療)は確実に成果を上げています。
アメリカには軍を退役した人たちに医療と介護を提供する退役軍人健康局という役所があるのですが、ここがオンライン診療(遠隔診療)を積極的に活用しています。
その歴史は1977年にまでさかのぼり、そこから2013年までに60万人の退役軍人たちがオンライン診療(遠隔診療)を利用しました。
その成果はとても大きく、以下の通りです。
- ●糖尿病患者の医療コスト20%減
- ●心不全患者の医療コスト30%減
- ●うつ病患者の医療コスト56%減
オンライン診療(遠隔診療)によって糖尿病、心不全、うつ病の医療コストが大幅に減ったことは、辻褄が合います。
というのも、この3つの病気は長期間の治療が必要になるからです。
オンライン診療(遠隔診療)では通院の面倒がないため、患者たちの通院ストレスが大幅に減り治療を続ける意欲を落としません。
もちろんメリットは医療コストが減ったことだけではなく、患者満足度は86%に達し、治療成績も直接の対面診療並を維持しました。
コスト問題は残るがイギリスでも大成功
イギリスでは2008年から2010年にかけて、オンライン診療(遠隔診療)の実証事業が行われました。
対象患者約3,000人の病気は肺疾患、糖尿病、慢性心不全の3つです。
なんとオンライン診療(遠隔診療)を実施したことで、直接の対面診療より死亡率が45%も減ったのです。
ただイギリスのケースでは、オンライン診療(遠隔診療)のみではなく、オンライン診療(遠隔診療)と対面診療を組み合わせていました。その結果、コスト、つまり医療費はかなり高額になりました。
今回のイギリスのオンライン診療(遠隔診療)の実証事業では、患者を1年延命させるコストが1,300万円かかることが分かりました。イギリスの通常の医療ではこのコストの限度額を420万円に設定しているので、オンライン診療(遠隔診療)は高額な医療であることが証明されてしまったのです。
これはオンライン診療(遠隔診療)用の医療機器のコストと通信コストが意外にかかったからとみられています。
オンライン診療(遠隔診療)は良いと断言するためのエビデンス
日本でオンライン診療(遠隔診療)が一気に拡大しないのは、厚生労働省が「医療の原則は直接の対面診療」と考えているからです。厚生労働省が根拠としているのは医師法第20条です。
日本でもオンライン診療(遠隔診療)を導入している医師やオンライン診療(遠隔診療)を受けたことがある患者たちは、良いシステムであると高く評価しています。
評価がさらに高まれば、医師法第20条の分厚い壁も打ち破ることができるでしょう。
そのときキーワードになるのがエビデンスです。
エビデンスは日本語で「証拠」あるいは「根拠」という意味です。
オンライン診療(遠隔診療)の普及にエビデンスが必要であるという意味は、オンライン診療(遠隔診療)を良いと評価するだけの証拠がありますか?ということになります。
医療を医療たらしめているのはエビデンスである、と言っても良いくらい、エビデンスは重要です。特にオンライン診療(遠隔診療)のような新しい医療には、膨大な量のエビデンスがないと普及しません。
エビデンスがしっかりしていないと厚生労働省が納得しないばかりか、まだオンライン診療(遠隔診療)を試したことがない医師たちも「使ってみよう」とは思わないでしょう。
外科医が手術前に手を洗うのはエビデンスがあるから
エビデンスの重要性を理解するには、消毒のエピソードが分かりやすいでしょう。
外科医は手術室に入る前に入念に手を洗います。洗剤やアルコールを何種類も使い、指と爪の間から手首、ひじあたりまでゴシゴシやります。その上に手術着を着て、ゴム手袋を着用するにもかかわらず、そこまで徹底して手を洗うのです。
それは、外科医が手を消毒しないで手術に臨むことにより、患者が命を落としてしまう危険性があるからです。
現代では当たり前の考え方ですが、このことを発見したのは1860年代のハンガリー人産科医でした。
その産科医が勤務していた産科病院で、第1病棟は産褥熱による死者が多数発生していたのに、第2病棟では産褥熱の発生が少なかったのです。
産褥熱とは出産直後に起きる感染性の発熱を伴う病気です。
その産科医が調べたところ、第1病棟には最近まで、敗血症という病気で亡くなった医師が働いていたことが分かりました。その医師は第2病棟では働いていませんでした。
つまり、その医師が持っていた「ばい菌」が、分娩のときに妊婦に感染し産褥熱を引き起こしていたのです。
このころ世界の外科界では、手術前に手を洗う習慣がなかったどころか、着回しのコートを着て、使い回しの医療器具を使って手術をしていました。
そこでその産科医が病院内で「手術や分娩前には必ず塩素で手を消毒すること」というルールを定めると、見事に産褥熱が減ったのです。
つまり「手術での死亡率を下げるには外科医は手を洗わなければならない」という考え方は正しくて、その正しさを証明するエビデンスが確立したのです。
正しい医療、役に立つ医療が普及するには、エビデンスが必要なのです。
まとめ:エビデンスの提示は医師やメーカーの責務
今回紹介した、アメリカやイギリスでのオンライン診療(遠隔診療)の成果は、オンライン診療(遠隔診療)は良い医療であると評価するためのエビデンスの一部になっています。
アメリカでは治療成績を落とすことなく、オンライン診療(遠隔診療)によって大幅なコストダウンを図ることができました。
イギリスの実証事業では、コストの問題は残りますが、効果が出ることが実証されました。
しかしこれだけでは「十分なエビデンス」とはいえず「エビデンスの一部」どまりでしょう。
なぜなら欧米での成果だけでは、日本における日本人医師による日本にいる患者のためのオンライン診療(遠隔診療)のエビデンスにはなり得ないからです。
このことはオンライン診療(遠隔診療)を推進する医師や医療機器メーカーの担当者たちももちろん承知しています。彼らは今後、日本式オンライン診療(遠隔診療)のエビデンスを出し続けていくことになるでしょう。
当クリニックのED・AGA・肥満治療はオンライン診療が可能です。
料金設定も「予約料500円+お薬の送料一律500円+お薬代」のみとなっております。
厚生労働省の告知に基づき、当クリニックでの初診は来院で受診して頂いた上で、
再診時よりオンライン診療による受診が可能となります。
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