記事リリース日:2018年3月26日 / 最終更新日:2019年1月21日
【オンライン診療(遠隔診療)の経済学】
①首相にプレゼンした「メドレー(MEDLEY)」ってどんな会社?
シリーズ「オンライン診療(遠隔診療)の経済学」では、経済の視点でオンライン診療(遠隔診療)を深く掘り下げていきます。
初回は、2017年に首相にオンライン診療(遠隔診療)の利便性をアピールしたことで注目されたMEDLEYこと株式会社メドレー(以下、メドレー)を紹介します。
IT企業のことを知らずにオンライン診療(遠隔診療)は語れない?
一般的な診療は、医師と患者が「会う」ことで成立します。
一方のオンライン診療(遠隔診療)は、医師と患者を「IT機器がつなぐ」という構図になっています。
オンライン診療(遠隔診療)を医療の観点から見ると、IT機器が医療を便利にしている、と見えますが、経済の観点から見ると、ITビジネスに新たな市場が生まれた、と見ることができます。
治療器具にしても抗がん剤にしても、医療はすでにビッグビジネスを形成しています。IT業界も世界を席巻しているビジネスです。
オンライン診療(遠隔診療)は、2つもの巨大な市場に籍を置いている珍しい分野なのです。
つまり、オンライン診療の現在と将来はIT企業がカギを握っている、ともいえるのです。
それで、オンライン診療(遠隔診療)を知るには、オンライン診療に参入する企業を知ることが欠かせないのです。
総理官邸と南相馬市をつないだメドレー
安倍首相が体験したのは、東京・永田町の首相官邸と東日本大震災で被災した福島県南相馬市との間のオンライン診療(遠隔診療)です。
総理官邸にいる安倍首相はタブレットに映し出された医師と話し、南相馬市にいる医師はパソコンに映し出された首相と話します。
主治医役の南相馬市の医師が症状について質問すると、患者役の総理が「体調は順調です。薬はきちんと飲んでいます」と応じました。
このとき使われたオンライン診療(遠隔診療)のシステムが、メドレーの「クリニクス」です。クリニクスはすでに多くの医師やクリニックに使われているので、その実績が買われて、首相へのオンライン診療(遠隔診療)のプレゼンターに抜擢されたのでしょう。
※首相がオンライン診療(遠隔診療)を体験した際の詳細は、こちらの記事にまとめています。
ユニークな経歴を持つツートップ
会社の経営陣といえば会長や社長たちのことをいいますが、メドレーには「代表取締役社長」のほかに「代表取締役医師」がいます。後者はとても珍しい役職名です。
瀧口浩平・代表取締役社長は高校在学中に市場調査や統計調査を行う米国法人「ゲマインシャフト社」を立ち上げます。その後この会社を譲渡し、2009年にインターネットビジネスと医療を事業の柱にする株式会社メドレーを創業しました。
医師でも医療従事者でもなくビジネスパーソンである瀧口社長は、オンライン診療(遠隔診療)が持つ「医療とIT」の2つの顔のうち、主にITビジネスを担っているといえそうです。
豊田剛一郎・代表取締役医師は、東京大学医学部を卒業した脳神経外科医です。医療の道から突如、マッキンゼー・アンド・カンパニーという会社に転身しました。
マッキンゼー社はアメリカに本部を置く世界的なコンサルタント企業です。豊田氏はここでヘルスケア業界のコンサルティング業務に携わった後、2015年に瀧口社長のメドレーの共同代表に就任しました。
豊田・代表取締役医師は「医療とIT」のうち、主に医療分野を担当しているわけですが、ビジネス界にも精通しているといえます。
瀧口氏も豊田氏も1984年生まれという共通点があります。
その他の役員にも、東大工学部を卒業した後に証券会社にいた人や、大手ソフトウェア開発企業出身者、人材ビジネス会社出身者、そして医師など、医療とビジネスのスペシャリストが名前を連ねています。
求人サイトや医療辞典サイトなどを経てオンライン診療(遠隔診療)へ
メドレーは2009年に創業した、東京・渋谷に本社を置く医療系ベンチャー企業です。創業時からオンライン診療(遠隔診療)を手掛けていたわけではなく、最初は医療と介護の求人サイト「ジョブメドレー」が事業の柱でした。
豊田氏が代表取締役医師に就任した2015年に、オンライン医療辞典「メドレー」を立ち上げました。約600人の医師が病気情報や薬の解説などをインターネットで配信しています。
2015年には、全国の介護施設の情報を掲載したサイト「介護のほんね」の運営企業を子会社化しました。
そして2016年2月、オンライン診療(遠隔診療)サービス「クリニクス」を開始します。クリニクスの内容については次の章で詳しく紹介しますが、2016年にオンライン診療(遠隔診療)を開始したのは、絶妙なタイミングだったといえます。
厚生労働省は従来、診療は患者と医師が面談する「直接の対面診療」が大原則であるとして、オンライン診療(遠隔診療)は僻地や離島でしか認めない方針でした。
ところがクリニクスがスタートした前年の2015年に、厚生労働省は「直接の対面診療を行った上で、オンライン診療(遠隔診療)を行わなければならない、というわけではない」という見解を発表したのです。
またクリニクス開始翌年の2017年には、厚生労働省は禁煙外来において、初診からオンライン診療(遠隔診療)を行える「全面オンライン診療(遠隔診療)」を許可しました。
厚生労働省の規制緩和の動きに見事にマッチングしたビジネス展開といえるでしょう。
クリニクスの特徴
メドレーのオンライン診療(遠隔診療)クリニクスを使うと、診察予約、問診、診療、治療費の支払い、薬と処方せんの配送を、インターネット上で行うことができます。
クリニクスを導入している医療機関は2017年現在、北海道から沖縄まで約600機関に及び、その9割はクリニックです。
クリニクスを導入しているクリニックの診療科は、一般内科、皮膚科、産婦人科、耳鼻咽喉科、呼吸器科、泌尿器科、精神科などさまざまです。
ただ、そのほとんどはオンライン診療(遠隔診療)と直接の対面診療を併用しています。薬物療法がメーンになる病気や、医療機関にかかることがためらわれる病気を治療する医師が、積極的にクリニクスを導入する傾向にあります。
クリニクスを使う患者は、事前にクリニクスのシステムをスマホにインストールする必要があります。インストールは無料です。
患者がお金を支払うのは、診療料と予約料です。規制緩和が進んだとはいえ、厚生労働省は無条件でオンライン診療(遠隔診療)を認めているわけではないので、クリニックの多くはオンライン診療(遠隔診療)を自由診療で行っています。
またクリニクスで保険診療を行っているクリニックもありますが、この場合、初診だけは直接の対面診療を行っています。
ITとインターネットで日本の医療の課題を解決するビジネス
メドレーは、単に便利な医療をつくろうとしているのではありません。豊田・代表取締役医師はマスコミのインタビューに対し、膨大な医療費、超高齢社会、医師や看護師たち医療従事者のハードワークといった、医療崩壊を起こしかねない課題を解決するためにメドレーの共同経営者になった、と答えています。
そのほかの役員たちも積極的にマスコミの取材を受け、日本の医療の問題点とその解決方法のアイデアを提示しています。
メドレーは医師の現状について、
- ・医師不足が叫ばれながら医師が診療以外の雑用をこなしている
- ・医師が過度な残業を受け入れることでかろうじて医療制度が成立している
とみています。
一般企業では、お金を稼ぐことができる有能な社員に雑用はさせませんし、過度な残業を改善しないと大きなバッシングを受けます。いずれも経営を揺るがすことになるからです。
一般企業で許されないことが医療界で横行していることについて、メドレーは「便利なシステムを使いこなせていないから」と考えているようです。
一般企業や一般ビジネスに精通しているスタッフが多いメドレーは、便利な技術や効率化のための手段をたくさん知っています。
メドレーのビジネスモデルは、ITとインターネットという便利な技術と効率化の手段を、医療に落とし込むことなのです。
医療は「IT後進地域」
日本の医療が世界のトップ集団に所属していることは疑いありませんが、ことIT化に関しては、医療は完全に「後進地域」です。
例えばコンビニ業界は、商品もレジも顧客もネットで管理していますが、医療界では電子カルテですら病院の導入率は28%にすぎません。
電子カルテとは、患者情報をパソコンの中に入れる「最低限のIT化」なのですが、それすら3割に満たないのです。
「日本の医療を大きく変え、新たな価値を生み出すサービス」「インターネットの力を医療界の隅々に行き届かせること」これがメドレーの使命となっています。
まとめ:メドレーはオンライン診療(遠隔診療)の中心で注目度も高い
メドレーには、医療とビジネスのエリートが集結しています。マスコミの注目度も高く、オンライン診療(遠隔診療)の未来がどうなるのかを予測するには、メドレーの動向が最も重要となり、オンライン診療(遠隔診療)の在りかたを左右すると言っても過言ではなく、目が離せない企業となっております。
※本記事はシリーズとなっており、続きの記事がございます。
次記事『【オンライン診療(遠隔診療)の経済学】②どんな企業が参加しているの?』はこちらからご覧ください。
当クリニックのED・AGA・肥満治療はオンライン診療が可能です。
料金設定も「予約料500円+お薬の送料一律500円+お薬代」のみとなっております。
厚生労働省の告知に基づき、当クリニックでの初診は来院で受診して頂いた上で、
再診時よりオンライン診療による受診が可能となります。
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