対面診療による糖尿病治療のスタート
通常の糖尿病治療は、健康診断で血糖値が高いことが分かって始めることが多いでしょう。
糖尿病はよほど悪化しても合併症が出ない限り自覚症状は出ません。そのため糖尿病治療では、異変や体調不良をきっかけとして医者にかかることはまれといえます。
対面診療では初診の予約は不要
ほとんどのクリニックでは、糖尿病疑いの患者には予約を求めていません。患者は、血糖値が書かれた健診結果の用紙と保険証を持参して、内科クリニックに行き受け付けをします。
受け付けでは「健診で血糖値に異常が出ました」と伝えるだけで大丈夫です。
問診表に必要事項を記入
受け付けを済ませると、問診表を渡されるので記載します。
その後、看護師による聞き取り形式の問診があります。体重測定を行うこともあります。
検査を行います
看護師の問診が終わると、そのまま血液検査の採血と尿検査の採尿を行います。
糖尿病における検査は多岐にわたり、しかもそれぞれとても重要なので、別の章で解説します。
診察を行います
糖尿病の治療はバリエーションがたくさんあるので、医師の「見立て」がとても重要になります。
それで医師は、初診時の診察や血液検査が出た後の2回目の診察など、治療開始当初は特に力を入れます。
例えば、糖尿病と診断されてもまだ初期段階であれば、薬を使わないこともあります。食生活の改善し、日頃の運動不足を解消することで、症状が悪化しないことがあるからです。
治療が開始されます
糖尿病の治療には、食事療法、運動療法、薬物療法の3つがあります。
軽症の場合は、食事療法と運動療法のみを行い、進行すると3つすべて同時並行で行います。
薬物療法が始まっても、食事の管理と運動は継続する必要があります。
食事療法による糖尿病治療
食事療法ではまず、患者は現行の食生活について詳しく尋ねられます。そのうえで、健康に良くない食習慣の中止と、望ましい食事方法が指導されます。
クリニックによっては医師ではなく看護師や管理栄養士が食事指導を行います。
食事療法で重要なのはカロリー制限です。糖尿病の患者はカロリーオーバーしていることが多いので、最低限必要なカロリーのみを摂取するよう指導されます。
人が最低限必要な1日分のカロリーは、次のように計算します。
- ・身長(m)×身長(m)×22×身体活動量=最低限必要な1日分のカロリー
- ・身体活動量(デスクワークが多い人は25~30、立ち仕事が多い人は30から35、力仕事が多い人は35以上)
- ・完全に治療をやめてしまった人
例えば、身長170cmのデスクワークが多い人は、1,590~1,907キロカロリーとなります。計算式は次の通りです。
カロリー摂取量を制限したうえで、次の点に注意する必要があります。
- ・ゆっくり、よく噛んで食べる
- ・深夜や寝る前に食べない
- ・朝昼晩、3食食べる
- ・栄養バランス良く食べる
- ・野菜を多く摂る
運動療法による糖尿病治療
糖尿病患者に運動が必要なのは、筋肉への血流を増やさなければならないからです。
筋肉にたくさんの血液が届くと、血液内のブドウ糖が消費され、血糖値が下がります。筋肉が増えるとインスリンの効果が高まり、これも血糖値を下げます。
インスリンはブドウ糖を細胞内に取り込むことを促進するので、インスリンが「元気」になると、血糖値が下がるのです。
糖尿病患者が行う運動は、有酸素運動と筋力トレーニングです。
運動メニューは糖尿病の程度や年齢、これまでの運動歴によって異なりますが、例えば次のようなメニューがあります。
- ・15分のややきつめの歩行を1日2回行う
- ・1日1万歩歩く
- ・足、腰、背中の筋肉を鍛える
- ・本格的なスポーツを1週間に150分行う
それまで運動をしていなかった人が急に過度な運動を始めると、関節を傷めたり転倒したりして、別の健康被害を引き起こすことになりかねません。
糖尿病患者の運動量は、医師の指示の範囲内にとどめておいたほうが無難です。
薬物療法による糖尿病治療
糖尿病で使う薬は、主に次の4つに分かれます。
- ・インスリンの分泌を増やす薬
- ・インスリンの作用をよくする薬
- ・糖の吸収と排泄を調節する薬
- ・インスリンを直接体内に補充する薬
糖尿病を治療する医師は、検査結果、患者の様子、年齢や仕事内容などから薬を選択します。
さらに病気の進行や治り具合によって薬を変えていきます。
インスリンを直接体内に補充する薬はインスリン注射薬療法といい、患者が自分で注射をすることになります。これは患者の負担がとても大きい治療法なので、糖尿病の初期の治療では「インスリン注射にならないこと」が目標になります。