記事リリース日:2018年11月9日 / 最終更新日:2019年1月21日
オンライン診療(遠隔診療)で
アフターピルの処方をするメリットと課題
アフターピルは緊急避妊薬といい、性交後に妊娠を望まない女性が飲む薬です。この薬によって高い確率で避妊ができます。
通常のピルは月経の周期に合わせて飲むのが一般的ですが、こちらは性交後に飲むので、アフター(後で)という名称で差別化しています。
アフターピルはドラッグストアなどで気軽に買うことができる薬ではありません。
医師の処方が必要です。しかしアフターピルの効果は性交から時間が経つほど薄れてしまいます。
そこでアフターピルを、医師によるオンライン診療(遠隔診療)を使って素早く処方しようとする動きが生まれました。
しかし厚生労働省は、アフターピルをオンライン診療で処方することは“不適切”という立場を取っています。なぜでしょうか。
アフターピルと望まない性交についての基礎知識
日本産科婦人科学会は、アフターピルについて次のように定義しています。
- ・避妊に失敗した性交や避妊をしなかった性交の後に緊急的に用いる薬
- ・通常のピル(経口避妊薬)のように計画的に妊娠を回避するものではない
- ・最後の避妊手段
薬は主に2種類だが、100%ではない
アフターピルの薬の商品名は、経口黄体ホルモン受容体調節剤「エラ」やレボノルゲストレル(LNG)単剤「ノルレボ」などです。
ノルレボは、性交後72時間(3日)以内に飲むことで避妊効果が期待できます。エラは120時間(5日間)以内に飲まなければなりません。
これらの薬を飲んでも100%避妊できるわけではありませんが、高い確率で避妊ができます。
望まない性交について
望まない性交の最悪の形態はレイプです。
ただレイプ以外にも望まない性交によって女性が妊娠の危機に立たされることがあります。
内閣府男女共同参画局は、薬物やアルコールを使った性犯罪と性暴力として次のような事例を挙げています(*)。
「飲み物を飲んだら急に眠くなって気を失って、気がついたらセックスの最中だった」
「お酒を断れず飲んだら眠くなり、起きたら胸や下半身を触られていた」
「よく効く頭痛薬と言われて飲んだら体が動かなくなり複数の人とセックスをさせられ、動画も撮られた」
*「薬物やアルコールなどを使用した性犯罪・性暴力って?」(内閣府男女共同参画局)
http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/dfsa/index.html
限られた時間内に医者探しから通院、薬の入手までこなさなければならない
アフターピルはこのような被害に遭った女性の、本当の意味での“最後の砦(とりで)”になるわけです。
しかし一般の女性は、どの産婦人科がアフターピルを扱っているか知りません。
まずは医療機関を探すことから始めなければなりません。
そこから予約を入れ、医療機関に出向き、医療機関の受付で事情を説明し、医師の診察を受け、処方せんを入手し、薬局に行って薬を手に入れ、ようやく飲むことができます。
これらの行動を、アフターピルの効果が有効な120時間以内または72時間以内に終わらせなければならないのです。
アフターピル処方をオンライン化するメリット
オンライン診療なら、女性がアフターピルを入手するまでの時間を大幅に短縮することができます。
まず、医療機関に行く必要がないので、これだけで少なくとも1時間以上は節約ができます。
そして患者は医療機関の受付と話す必要はなく、医師だけに事情を説明すればいいのです。
これは患者の精神的な負担を大幅に減らすでしょう。
受診と薬代の支払いもクレジットカードを使ってオンライン決済で済ませることができます。
アフターピルのオンライン診療を行っているクリニックは薬を常備しているので、宅配便で直接患者宅に薬を送ることができます。
医師から処方せんを受け取り、調剤薬局に行って薬を受け取る、という工程も要らなくなるのです。
立ち上がった医師の主張
厚生労働省が、アフターピルをオンライン診療(遠隔診療)で処方することは“不適切”としているにも関わらず、新宿のあるクリニックがこのサービスを始めました。
その窓口はこのURLになります。
https://navitasclinic.jp/archives/blog/1029
このクリニックの理事長はオンライン診療でアフターピル処方を始めた理由について、「アフターピルはすべての産婦人科が扱っているわけではなく、特に地方だと入手しづらい事情があるから」としています。
また、対面診療だけでは緊急事態に対応できない、とも考えています。
さらにこの理事長は、アフターピル処方に必要な情報を対面診療で得ても、オンライン診療で得ても同等であると考えています。
フランスでもアメリカでも気軽に使える
日経トレンディによると、フランスでは、アフターピルが必要になった女子高校生に養護教諭が無料で配布しているそうです。
アメリカでは処方せんなしでドラッグストアでアフターピルを購入できます。
望まない妊娠のリスクは、性犯罪だけにとどまりません。
コンドームに穴が開いていたり、性交の途中からコンドームを装着したり、酔った勢いで避妊せず性交に及ぶなど、多くの人が犯すミスや不可抗力によっても妊娠リスクが発生してしまうのです。
なのに、医師による対面診療でしかアフターピルが入手できないと、仮に金曜の夜に性交したら、土日は医療機関が休みなので月曜の朝にならないと対応できないことになります。
待つだけで48時間以上ロスしてしまいます。
そして月曜が祝日だった場合、ノルレボの有効期限72時間(3日)が経過してしまいますので、手遅れになってしまう可能性が極めて高まります。
なぜ厚生労働省は消極的なのか
厚生労働省は、医師が性交後の女性をオンライン診療(遠隔診療)で診てアフターピルを処方することは“不適切である”としています。
また、日本産科婦人科学会からも、アフターピル処方のオンライン診療化に慎重な声が出ています。
厚生労働省医政局医事課や日本産科婦人科学会などが消極姿勢を打ち出す理由は以下のとおりです。
- ・そもそもオンライン診療のルールに合致しない
- ・犯罪が絡んでいる可能性がある
- ・アフターピルが届かない可能性がある
- ・薬剤師による対応が難しい
- ・安易な使用が広がる可能性がある
厚生労働省は、「オンライン診療を使うにしても、原則として初診は対面診療でなければならない」という立場です。
オンライン診療は医師と患者の信頼関係が築かれた後に実施することになっているのです。
しかし、アフターピルの処方を目的としたオンライン診療の場合、性交後の女性が急遽クリニックの医師とオンラインで連絡を取り、そのままオンライン診療に入り、薬を処方をして終わってしまいます。
オンライン診療ではこうした診療形態は想定していない、と厚生労働省は主張しているわけです。
また、アフターピルの処方が必要なケースはレイプなどの犯罪が絡んでいる可能性があります。
その場合、犯罪被害者である患者が、アフターピルを受け取って終わりというわけにはいかず、相応のケアや診療が必要になります。
また、オンライン診療によるアフターピル処方では薬を宅配などで送ることになりますが、配達ミスが起きる可能性はゼロではなく、悪天候や交通事情、受取人の不在などによる配達の遅延という可能性なども生じてしまいます。
アフターピルは性交後72時間(または12時間)以内に飲むことが重要なので、宅配ミスは最悪な結果を引き起こしかねません。
その点、対面診療なら医師が患者にアフターピルを手渡しできるので確実です。
アフターピルは日本ではまだあまり普及していないので、薬局の薬剤師が正しい服用方法を説明できない可能性があります。
また、アフターピルがオンライン診療で簡単に手に入るようになると安易に使うケースが増えてしまう危険があり、それは安易な性交を助長することになりかねません。
―といったようなことを、厚生労働省などは考えているのです。
まとめ~女性の立場になって考えてほしい
厚生労働省が示す、アフターピルのオンライン診療(遠隔診療)による処方を認めない理由は、それなりに合理的であるといえるでしょう。
しかし、望まない妊娠をしたときの女性の負担や苦悩やその後の人生を考えると、「女性の立場になってルールをつくるべきではないだろうか」と感じる人は少なくないでしょう。
アフターピルの処方はオンライン診療の利便性をいかんなく発揮できるだけに、オンライン診療でスムーズに処方ができる事を前提とした上で、議論が前進することを望みたいものです。
当クリニックのED・AGA・肥満治療はオンライン診療が可能です。
料金設定も「予約料500円+お薬の送料一律500円+お薬代」のみとなっております。
厚生労働省の告知に基づき、当クリニックでの初診は来院で受診して頂いた上で、
再診時よりオンライン診療による受診が可能となります。
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