オンライン受診勧奨と遠隔健康医療相談等の整理
オンライン受診勧奨とは、医師が患者にオンラインを使って(インターネットを使って)受診をすすめることです。
遠隔健康医療相談とは、医師がオンラインで患者の健康医療相談を受けることです。
この2つがなぜ「問題」になっているのかというと、「正式なオンライン診療」との区別が不明瞭だからです。
正式なオンライン診療は、公的医療保険の対象になっているので、厚生労働省の規制が働きます。
しかし、オンライン受診勧奨や遠隔健康医療相談は、事実上任意であるため、厚生労働省の規制が働きません。
ところが、オンライン診療もオンライン受診勧奨も遠隔健康医療相談も、同じIT・インターネットシステムを使うので、
「やろうと思えば」オンライン受診勧奨や遠隔健康医療相談という形式で、ほとんどオンライン診療と同じことができてしまうわけです。
これではオンライン診療制度が「骨抜き」になってしまいます。
そこで厚生労働省には、つぎのようなルールがあります。
- ・オンライン受診勧奨では、具体的な病名を挙げてその病気にかかっていることを患者に伝えたり、一般用医薬品の使用を指示したり、処方を行ったりすることはできない。
- ・遠隔健康医療相談では、患者などの相談者の個別的な状態を踏まえた医学的判断を行うことはできない。
しかし、このルールはオンライン(インターネット)を使った医療の可能性を狭めています。
そこで、検討会では、次のようにルールを緩和することができないか、考えていくことにしました。
- ・オンライン受診勧奨で、①発症する可能性がある具体的な病名を挙げて、医学的な判断を行って受診をすすめる、②一般用医薬品を用いた自宅療養をすすめる、③医学的判断に基づく治療方針を伝える――といったことをできるようにする
- ・遠隔健康医療相談で、患者個人の心身の状態に応じた医学的な助言を行うことを可能にする
もし実際にこうしたことができるようになると、オンライン受診勧奨や遠隔健康医療相談で「かなりのことができる」ようになるでしょう。
つまり、インターネットを使った医療の可能性が広がるわけで、患者の利便性は向上しそうです。
参考:オンライン受診勧奨と遠隔健康医療相談等の整理
https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000473052.pdf
対面診療との組み合わせ及び初診対面診療の原則の例外の検討
現行のオンライン診療が「使いにくい」と指摘されるのは、①初診から半年間は対面診療を行わなければならない、②オンライン診療がスタートしても3カ月に1回は対面診療を行わなければならない――からです。
これでは、発症から半年以内に治ってしまう病気の患者はオンライン診療を使うことができません。
また、オンライン診療が始まっても、患者は対面診療を受けるために3カ月に1回はクリニックに行かなければならず、オンライン診療を受けるメリットが減ってしまいます。
そこで今回の検討会では、対面診療とオンライン診療の組み合わせの例外や、初診対面診療の原則の例外を考えていくことになりました。
これも患者の利便性の向上が期待できます。
https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/584683/
同一医師による診療原則の例外の検討等
現行のオンライン診療を「使いにくく」している規制は、まだほかにあります。
対面診療を行った医師がオンライン診療を行わなければならない、というルールです。
つまり、患者は対面診療をしてくれた医師のオンライン診療しか受けられない、ということです。
このルールは、複数人の医師がいるクリニックや病院で、対面診療とオンライン診療を分業することを阻んでいます。
例えば、インターネットやIT機器が苦手でオンライン診療を行っていない医師の対面診療を受診してしまった患者は、オンライン診療を受けられないわけです。
そうなると患者が困るだけでなく、オンライン診療を行っていない医師を敬遠する患者が出てくる可能性もあるので、医師側にも不利です。
そこで今回の検討会では、この「同一医師による診療」の例外づくりを検討します。
チーム医療や複数主治医制を活用し、対面診療をしていない医師がオンライン診療を実施する道を探るわけです。
対面診療が得意な医師は対面診療に集中し、オンライン診療が得意な医師がオンライン診療に集中すれば治療効果が高まることがで期待できますし、医師の負担も軽減できそうです。
D to P with N(看護師等が診療を補助するオンライン診療)の明示
DはDoctor(医師)、PはPatient(患者)、NはNurse(看護師)を意味します。
D to Pは「医師と患者の間の医療」を意味します。with Pは、医師と患者の間の医療に看護師が積極的に関与することを意味します。
オンライン診療は在宅医療でも使われています。
在宅医療では訪問看護師が活躍しています。したがって在宅医療でのオンライン診療では、D to P with N「医師と看護師が密接に連携した医療」が特に重要になってきます。
そこで今回の検討会では、看護師がオンライン診療で行うことができる業務を明記することを目指します。
オンライン診療を実施する医師の研修必修化
検討会では、オンライン診療を実施する医師に、研修の受講を必修にするかどうかも検討します。
オンライン診療は新しい医療なので、患者としても、オンライン診療研修を受けた医師のほうが安心できます。