Telemedicine Report
記事リリース日:2019年4月9日 / 最終更新日:2019年4月9日
厚生労働省が2019年1月、オンライン診療(遠隔診療)の在り方を見直す作業に入りました。
オンライン診療は2018年4月に公的医療保険の対象になり本格的にスタートしましたが、依然として規制が強く「使いにくい」と感じている医師や患者は少なくありませんでした。
厚生労働省は「オンライン診療の見直し検討会」を設置し7つの改善ポイントを提示しました。
これで医療機関と患者に歓迎される仕組みに生まれ変わることができるのでしょうか。
目次
オンライン診療の見直し検討会の正式名称は「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」といい、その初会合が2019年1月23日に都内で開かれました。
出席者は以下の12人です。
出席者の顔ぶれから、この検討会の性質がわかります。
医師の代表や病院経営者、医学研究者だけでなく、医療ビジネスに関わっている人たち(★印)も参加していることから、今回の見直しは、効率化や費用対効果やコストやビジネス化についても検討されます。
このことは、7つの見直しポイントにもくっきり表れています。
オンライン診療の見直し検討会は、次の7項目に焦点を当てて、オンライン診療制度を改善していきます。
このうち、患者に影響しそうな項目について詳しくみていきます。
オンライン受診勧奨とは、医師が患者にオンラインを使って(インターネットを使って)受診をすすめることです。
遠隔健康医療相談とは、医師がオンラインで患者の健康医療相談を受けることです。
この2つがなぜ「問題」になっているのかというと、「正式なオンライン診療」との区別が不明瞭だからです。
正式なオンライン診療は、公的医療保険の対象になっているので、厚生労働省の規制が働きます。
しかし、オンライン受診勧奨や遠隔健康医療相談は、事実上任意であるため、厚生労働省の規制が働きません。
ところが、オンライン診療もオンライン受診勧奨も遠隔健康医療相談も、同じIT・インターネットシステムを使うので、
「やろうと思えば」オンライン受診勧奨や遠隔健康医療相談という形式で、ほとんどオンライン診療と同じことができてしまうわけです。
これではオンライン診療制度が「骨抜き」になってしまいます。
そこで厚生労働省には、つぎのようなルールがあります。
しかし、このルールはオンライン(インターネット)を使った医療の可能性を狭めています。
そこで、検討会では、次のようにルールを緩和することができないか、考えていくことにしました。
もし実際にこうしたことができるようになると、オンライン受診勧奨や遠隔健康医療相談で「かなりのことができる」ようになるでしょう。
つまり、インターネットを使った医療の可能性が広がるわけで、患者の利便性は向上しそうです。
参考:オンライン受診勧奨と遠隔健康医療相談等の整理
https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000473052.pdf
現行のオンライン診療が「使いにくい」と指摘されるのは、①初診から半年間は対面診療を行わなければならない、②オンライン診療がスタートしても3カ月に1回は対面診療を行わなければならない――からです。
これでは、発症から半年以内に治ってしまう病気の患者はオンライン診療を使うことができません。
また、オンライン診療が始まっても、患者は対面診療を受けるために3カ月に1回はクリニックに行かなければならず、オンライン診療を受けるメリットが減ってしまいます。
そこで今回の検討会では、対面診療とオンライン診療の組み合わせの例外や、初診対面診療の原則の例外を考えていくことになりました。
これも患者の利便性の向上が期待できます。
https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/584683/
現行のオンライン診療を「使いにくく」している規制は、まだほかにあります。
対面診療を行った医師がオンライン診療を行わなければならない、というルールです。
つまり、患者は対面診療をしてくれた医師のオンライン診療しか受けられない、ということです。
このルールは、複数人の医師がいるクリニックや病院で、対面診療とオンライン診療を分業することを阻んでいます。
例えば、インターネットやIT機器が苦手でオンライン診療を行っていない医師の対面診療を受診してしまった患者は、オンライン診療を受けられないわけです。
そうなると患者が困るだけでなく、オンライン診療を行っていない医師を敬遠する患者が出てくる可能性もあるので、医師側にも不利です。
そこで今回の検討会では、この「同一医師による診療」の例外づくりを検討します。
チーム医療や複数主治医制を活用し、対面診療をしていない医師がオンライン診療を実施する道を探るわけです。
対面診療が得意な医師は対面診療に集中し、オンライン診療が得意な医師がオンライン診療に集中すれば治療効果が高まることがで期待できますし、医師の負担も軽減できそうです。
DはDoctor(医師)、PはPatient(患者)、NはNurse(看護師)を意味します。
D to Pは「医師と患者の間の医療」を意味します。with Pは、医師と患者の間の医療に看護師が積極的に関与することを意味します。
オンライン診療は在宅医療でも使われています。
在宅医療では訪問看護師が活躍しています。したがって在宅医療でのオンライン診療では、D to P with N「医師と看護師が密接に連携した医療」が特に重要になってきます。
そこで今回の検討会では、看護師がオンライン診療で行うことができる業務を明記することを目指します。
検討会では、オンライン診療を実施する医師に、研修の受講を必修にするかどうかも検討します。
オンライン診療は新しい医療なので、患者としても、オンライン診療研修を受けた医師のほうが安心できます。
オンライン診療が本格的にスタートしたのは2018年4月です。
今回の見直し検討会の初会合は2019年1月です。
つまり厚生労働省は、新しい制度をはじめてわずか9カ月で見直しが必要であると判断したわけです。
常に慎重を期して新制度を導入する厚生労働省としては「異例」といえるでしょう。
厚生労働省を動かしたきっかけのひとつが、今回の検討会のメンバーである黒木春郎氏が会長を務める日本オンライン診療研究会(※1)です。
日本オンライン診療研究会は、オンライン診療をどのような患者に提供すべきかを研究するグループで、20の診療科の120人の医師などで構成されます。
厚生労働省は、オンライン診療の見直し検討会の資料に、日本オンライン診療研究会の意見・要望を採用しています。
黒木氏たちの意見・要望は次のとおりです(※2)。
いずれも患者の利便性が向上しそうなものばかりですし、今回の見直し7項目にも影響を与えています。
厚生労働省がいち民間団体の意見・要望を受け入れ、それを制度の見直しのベースにすることも「異例」です。
日本オンライン診療研究会の活動が高く評価された証(あかし)といえるでしょう。
※1:https://online-m.org/about/
※2:https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000473053.pdf
厚生労働省がオンライン診療の見直しに素早く着手したのは、オンライン診療がインターネットシステムやITシステムに依存しているからでしょう。
インターネットもITも、日進月歩で進化しています。
したがって、インターネットとITを使うオンライン診療も、さらに進化できるポテンシャルを秘めているわけです。
見直し検討会が生み出す「新オンライン診療」はどのような形になるのでしょうか。
結果がとても楽しみです。
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