Telemedicine Report
記事リリース日:2018年1月4日 / 最終更新日:2019年1月21日
オンライン診療(遠隔診療)にIoTは欠かせません。IoTが存在していたからこそ、診療行為が遠隔化できるようになったのです。
そういった意味では、IoTはオンライン診療の“生み”の親です。
そしてIoTにもオンライン診療は欠かせません。
オンライン診療にビジネスチャンスが広がったことで、企業は今後ますますIoTを進化させるでしょう。
そういった意味では、オンライン診療はIoTの“育て”の親になるはずです。
「IoT」と聞くと「なんか聞いたことがあるけど、話が面倒臭そう」と感じる方もいらっしゃると思いますが、まったくそんなことはありません。
むしろ難しい印象がある医療や診療を、簡単にやさしく身近にしてくれるのがIoTなのです。
目次
まずはIoTのことがよく分からない方のために、専門用語を簡単に解説します。
IoTはInternet of Thingsの略で、「モノのインターネット」と訳されています。実はスマホも電話機とインターネットをつなげている点で、IoTです。
そのほか、冷蔵庫や自動車、住宅設備、医療機器も次々インターネットにつながっています。生活全般にIoTの波が押し寄せています。
オンライン診療(遠隔診療)に使う機器は、ほとんどがインターネットとつながているので、IoT機器といえます。
ITはこの中では最も歴史ある用語で、Information Technologyといい「情報技術」と訳されます。ただ、昔の家庭に置いてあった黒いダイヤル式電話や古いトランジスタラジオは、確かに「情報を伝える技術」なのですが、これらはITとは呼ばれません。
ITは、コンピューターやソフトウェア、インターネットなど最新技術に対して使われます。
ICTはInformation and Communication Technologyで、「情報伝達技術」といいます。ITの間にコミュニケーション(C)が入りました。
オンライン診療は、医師と患者のコミュニケーションをより強固にする技術ですので、まさにICTです。
AIは「人工知能」のことです。
人工知能が搭載されていないロボットは、人間の指示通りにしか動きません。しかし人工知能を持つロボットはロボット自身が情報を集め、その情報を解析して判断して動いていくのです。
鉄腕アトムは人工知能搭載ロボットで、ガンダムは人工知能が搭載されていないロボットです。
人工知能はすでに実用化されていて、囲碁やチェスでは最早人間がかなわないほど人工知能が進化しています。
医療のAIとしては、ベテラン医師が見逃してしまうようなCT検査画像上のわずかな異変を見つける技術が開発されています。
オンライン診療(遠隔診療)にもAIの波は訪れています。
クラウドは「雲」という意味です。
「みんなの頭の上に大きなパソコンが雲のように浮かんでいる」とイメージしてみてください。
その雲パソコンにみんながデータを保存すれば、みんなでたくさんのデータを使うことができます。
クラウドが登場する前の情報の共有は、友人内や社内に限られてきましたが、クラウドを使うとこれを国内規模、世界規模にまで広げることができるのです。
こうした用語とオンライン診療(遠隔診療)の関係は次のようにまとめることができます。
最初に紹介する遠隔医療のIoTは、株式会社メドレー(東京都港区)が運営しているオンライン診療(遠隔診療)ツール「クリニクス(CLINICS)」です。
2017年5月に安倍晋三首相が体験したことでも知られるシステムです。
クリニクスで使うIoT機器は、パソコンかスマートフォンになります。ここでは医師がパソコンを、患者がスマホを使っているケースで解説していきます。
患者と医師をつなぐのは、ビデオチャットという機能です。これはテレビ電話(ビデオ通話)のようなもので、お互いが相手の顔を画面上に見ながら、あたかも実際に面談しているかのように会話ができる仕組みです。
クリニクスの使用を希望する患者は、まず自分のスマホに専用アプリをインストールします。操作はとても簡単ですが、難しく感じる方はクリニックに出向けばスタッフが設定してくれます。
後は予約した時間にスマホ上のアプリを立ち上げれば、医師とテレビ電話ができます。
ここまでは普通のオンライン診療(遠隔診療)です。
クリニクスでは診療以外にも、24時間いつでも予約受付ができたり、治療費の支払いや処方せんと薬の配送手続きまでしてくれます。
支払いもクリニクスの画面にて所有のクレジットカード情報を設定して行います。
処方せんはいまのところ電子化が進んでいないので、普通の紙の処方せんが郵便で患者の自宅に届きます。薬の配達も宅配便によるアナログな方法で行われます。
クリニクスは全国で最も多く利用されているオンライン診療(遠隔診療)のひとつで、利用できる診療科は、一般内科、皮膚科、産婦人科、耳鼻咽喉科、呼吸器科、泌尿器科などがあります。
皮膚科診療は、患者が自身のスマホで患部を撮影し、それをクリニクスのシステムで皮膚科医に送ることができるので、オンライン診療(遠隔診療)が発揮しやすい領域です。
また高血圧症や糖尿病を扱う一般内科の治療は、どうしても治療期間が長引くため、患者が途中で通院をやめてしまうことが多くなります。
しかしオンライン診療(遠隔診療)であれば、通院時間と待ち時間がなくなるので、患者の治療モチベーションが維持できます。一般内科治療もオンライン診療(遠隔診療)向きといえます。
クリニクスでは原則、初診だけは直接の対面診療となりますが、ここでもIoTを使った工夫を凝らしています。
問診票は普通、患者が診療所に到着してから記入するのですが、クリニクスでは患者が初診の前に「電子問診票」を医師に送信することができるのです。
電子問診票は患者にとってメリットがあるだけではなく、クリニックとしても、事務スタッフが患者に紙の問診票を渡しそれを回収する手間を省くことができます。
IoTは医療の効率化を確実に進めることができるのです。
医療機器メーカーのオムロンが提供している「オムロン コネクト」というサービスは、さらにIoTが色濃く投入されています。
血圧計、体重体組成計、活動量計といった測定器とスマホを、ブルートゥースでつないでしまったのです。
ブルートゥース(Bluetooth)は、近距離専用の無線通信です。10メートル以内の距離にあれば、ブルートゥース機能が搭載された血圧計で計った血圧データを、スマホに飛ばすことができるのです。
スマホでは、血圧計などから受信した血圧の数値などを、専用のアプリに保存しておけます。長期間データを集めれば、スマホで自分の血圧や体重などの推移が把握できるのです。
またスマホで受けた血圧などのデータは、オンライン診療(遠隔診療)を利用したときに医師に届けることができます。
ちなみに体重体組成計では、体重のほかに、体脂肪率、内臓脂肪レベル、皮下脂肪率、基礎代謝、骨格筋率などを計測できます。
オンライン診療(遠隔診療)とIoTをフル活用しているのは、佐賀県鹿島市の織田病院(織田正道理事長)です。病床数111床の中規模の民間病院ですが、日本経済新聞や経済番組「ガイアの夜明け」など、マスコミに頻繁に取り上げられています。
織田病院がオンライン診療(遠隔診療)で力を入れているのは、退院後の症状が不安定な患者のフォローです。医師と患者にタブレットを持たせてオンライン診療(遠隔診療)を行っているのは、一般的な方法と同じです。
織田病院ではさらに、患者にスマートウォッチを着用してもらっています。そのスマートウォッチには緊急時に病院を呼び出す機能が搭載されているのです。
また患者宅にAIカメラを置く実験も始めています。
AIカメラは、見た目は普通の据え置き方の監視カメラと同じです。どこが人工知能(AI)なのかというと、カメラ自身が患者の異常を発見し病院に通報するのです。
例えば、患者が自宅のソファに座ったまま数時間まったく動かないときに、AIカメラが「急変した」と判断するのです。
また、自動車のナビシステムに使われているGPS(全地球測位システム)もオンライン診療(遠隔診療)に組み込んでいます。
織田病院がGPSを使って患者宅と街中を巡回しているスタッフの位置を把握し、急変患者宅に最も近い巡回スタッフに急行させる仕組みです。
このシステムは「動態管理サービス」といい、地図で知られるゼンリンと共同開発したものです。
織田理事長は日経新聞の取材に対し「病院側が端末で患者の様子を見ているだけで、患者や家族の安心につながる。変化に早く気付いて早期に対応すれば、再入院しなくてよくなる」と話しています。
50代60代は勿論ですが、今では70代の方もスマホを使う時代です。
パソコンは複雑な仕事に対応できるのですが、事務仕事に縁がない人には遠い存在でした。パソコンは金額も高いですし、キーボードでの入力操作も慣れていなければ使いづらいものです。
しかしスマホは、元々は電話なので親しみやすく、直感的に操作できる手軽さから、IoTをみんなの物にしました。
オンライン診療(遠隔診療)にもスマホがたくさん使われています。もしオンライン診療(遠隔診療)が日本隅々に届けられたとしたら、その功労者はスマホかもしれません。
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