記事リリース日:2017年10月2日 / 最終更新日:2019年1月18日
厚生労働省が推し進める
オンライン診療(遠隔診療)とは
オンライン診療(遠隔診療)は、これまでの日本の医療をさらに前進させる力を持っています。
しかし、あまりに新しすぎて、国は当初、慎重姿勢でした。もちろん、人の命に関わる政策なので、厚生労働省のことを対応が遅いとはいえません。
医療はもともと、法律によってとても厳しく規制されているので、患者自身が厚生労働省の意向を知っておくことはとても重要です。
そこで、オンライン診療について「厚生労働省が今どう考えているのか」と「厚生労働省が過去どう考えていたのか」についてみてみましょう。
今の厚生労働省もオンライン診療(遠隔診療)には消極的?
“対面診療を一切行わないことを前提とした遠隔診療を容認するものではありません”
【引用元】 http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03220_01
※以下、【引用】と表記している箇所は全て上記URLのホームページより抜粋しています。
この発言をしたのは、厚生労働省保険局医療課長の迫井 正深氏です。
2017年4月に医療系出版社が主催した、オンライン診療(遠隔診療)を行っている医師たちとの座談会で、厚生労働省の考えを示したのです。
対面診療とは、いわゆる普通の診療のことで、患者が診察室の中に入り、医師の前に置かれた椅子に座り、医師の診察や治療を受ける形式です。
つまりこの言葉の意味は、普通の診療をまったくやらずに、オンライン診療(遠隔診療)だけで医療を行うことはいかがなものか、ということになります。
いまでも厚生労働省は、オンライン診療(遠隔診療)を積極的に普及させたいとは考えているわけではない、ということが分かります。
微妙な発言になるのはやむをえない?
厚生労働省の難しい立場とは
では、厚生労働省はオンライン診療(遠隔診療)に消極的なのかというと、そうではありません。
厚生労働省保険局医療課長は、同じ座談会で「オンライン診療を否定するものではない」と述べています。
とても微妙な立場なのです。
それはそうでしょう。オンライン診療(遠隔診療)が良いものであることは、実証済みです。
また、インターネットやITやICTを積極活用して、どんどん進めている医師も出てきています。
いくら医療の番人である厚生労働省とはいえ、この波を押し返すことはできないでしょう。
しかし、厚生労働省が現段階で「オンライン診療(遠隔診療)をどんどんやってください」と言ってしまったら、これまでの医療現場の秩序が乱れ、医師や看護師たちが混乱し、ひいては患者の健康に不利益をもたらすかもしれません。
それが厚生労働省保険局医療課長の「否定はしないが、無条件に容認するものでもない」という発言につながっているのでしょう。
対面診療が原則という姿勢は貫く
それでは、厚生労働省が描くオンライン診療(遠隔診療)はどういうものなのでしょうか。もう少し厚生労働省保険局医療課長の言葉を拾い集めてみましょう。
厚生労働省医療課長の2017年段階での言葉①
【引用】
“医師と患者の直接対面が基本”
“患者側の要請に基づき、患者側の利点を十分に勘案した上で、直接の対面診療と適切に組み合わせて行うのであれば、遠隔診療は実施され得る”
ここから分かることは、厚生労働省は、医師と患者が直接対面する形式の診療を最大限守りたいと考えているということです。
つまり、直接対面式の診療こそ信頼できる医療であり、インターネットやIT機器を使った診療には、まだ少し心配しているのです。
「オンライン診療(遠隔診療)は、直接対面式診療と組み合わせよ」という言葉からも、現段階ではオンライン診療(遠隔診療)を絶対的に信用しているわけではないことが透けて見えます。
スマホやアプリを使いこなす若い方であれば、この考え方はお役所仕事のようで批判的にみるのではないでしょうか。
しかし、医療はこれまで通りでよいと考えている年配者であれば、厚生労働省の言う通りで間違いないと感じるかもしれません。
医療機関にかかる人は、圧倒的に高齢者が多いので、医療課長の発言は、多数の患者の考え方に近いのかもしれません。
しかし、どんな事でも新しい事は否定されることが多く、時間経過と共に認められてきます。
悪質な医療がはびこらないように、
との心配は当然
厚生労働省医療課長の2017年段階での言葉②
【引用】
“技術革新に呼応した適切な準備なしに遠隔医療を推進すると、かえって普及に水を差す”
“対面診療との関係や既存医療機関との連携を整理しないまま無秩序に遠隔医療を解禁すると、患者の偏った受療行動が助長されたり、質が不明確な遠隔医療が広がりかねません”
さて、この言葉を読んでいただければ、厚生労働省の心配事が、さらに明確になるのではないでしょうか。
厚生労働省は、技術革新がまだ不十分だと考えているようです。また、このままオンライン診療(遠隔診療)が発展してしまうと、偏った受療行動が増えてしまうと心配しています。
偏った受療行動とは、インターネットを使ったオンライン診療(遠隔診療)の便利さに慣れた人々が直接対面式の診療を敬遠してしまう、といった事例などを指します。
そして厚生労働省の最大の懸念は、質が不明確な遠隔医療の拡大です。医療は人の命に関わる神聖な領域ではありますが、一方で大きなおカネが動く医療ビジネスが繰り広げられていることも事実です。
実際、さまざまな医療現場で質が不明確な医療どころか悪質な医療が行われているのは事実です。
それではやはり、オンライン診療(遠隔診療)は慎重に進めていった方がいいのでしょうか。
実はそうではありません。
厚生労働省の本音は支援したいのでは
厚生労働省は決して、オンライン診療(遠隔診療)を否定したり、うやむやにしようとしたりしているわけではありません。むしろ、「もっとしっかりしたオンライン診療(遠隔診療)の体制を整えてくれれば、厚生労働省も後押ししますよ」という考えを持っています。
厚生労働省医療課長の2017年段階での言葉③
【引用】
“医療全体に、生活の視点を取り入れることは非常に重要です。在院日数短縮を進める中では、退院先での患者の生活の状況を十分に考えているか、といったことが問われ始めています。”
これは少し分かりにくいので、解説を加えます。
いま大きな病院は、こぞって入院患者を早期に退院させようとしています。それは国の医療費の予算が破綻寸前だからです。
在院日数の短縮とは、入院期間を短くすることであり、厚生労働省が強力に推し進めている政策です。
しかし、早期に退院させてしまうと、自宅に戻ってももう少し医療の支援があった方がいいという状態が想定されます。
オンライン診療(遠隔診療)は、そのようなもう少し医療の支援があった方がいい患者にうってつけだと、国は考えているわけです。
厚生労働省もオンライン診療(遠隔診療)のすごさと国の医療費予算への貢献度は十分認識しているのです。
厚生労働省医療課長の2017年段階での言葉④
【引用】
“普段診療を受けにくい人への医療提供にも役立つと考えられます。都心でも就労世代を中心に,平日は仕事で忙しく土日は医療機関が休みになるなど、医療にアクセスしにくい方が大勢います。特に生活習慣病の場合、遠隔医療により日常的な健康管理ができれば重症化を防ぐことも可能です。症状が悪化してから医療機関を受診するよりも、社会全体にとって良い循環となります。”
こちらも、オンライン診療(遠隔診療)のすごさを厚生労働省が認識している証拠といえるでしょう。
若い人の生活習慣病は、高齢者医療と同じくらい、国の重要課題です。インターネットやITに慣れた若い人が、オンライン診療(遠隔診療)によって日常の健康を管理できれば、健康寿命が長くなることが期待できます。
ここまでは2017年頃の厚生労働省の考え方を紹介しました。
それでは次に、厚生労働省が過去どう考えていたかについて見てみます。
対面診療が可能な時のオンライン診療(遠隔診療)はNGだった
厚生労働省がまだ厚生省だったころの1997年に、厚生省健康政策局長が都道府県知事にある事務連絡を送りました。
事務連絡というのは、国が地方自治体に向けて「こうしなさい」と指示するお手紙のようなものです。
そのお手紙の現物がインターネットに公開されていますので、分割して紹介します。
当時はまだ「遠隔診療」や「オンライン診療」という言葉は一般的ではなく、正式名称は「情報通信機器を用いた診療」だったことが分かります。
以下は、このお手紙の続きになります。
ここから解ることは、当時の厚生省は、オンライン診療(遠隔診療)は完全に脇役扱いだったということです。現代ほどインターネットやスマホ等の情報通信機器が発達・普及していなかった頃なので、オンライン診療(遠隔診療)自体がまだ信頼がおけるものではなかったと推測できます。
「慢性期疾患+症状が安定している」ことを条件にしています。つまり、急性期と症状が不安定の患者をオンライン診療(遠隔診療)で診てはダメということです。これがまさに国の規制です。
また、「例えば」をご覧いただきたいのですが、厚生省が想定していたのは離島・へき地だったのです。都心部にオンライン診療(遠隔診療)を普及させようという考えは、まったくなかったのでしょう。
さらに、対面診療が行えるときは、対面診療を優先しなければならない、といった趣旨の文章もあります。
この文章が1997年のもので、先に紹介した厚生労働省医療課長の見解は2017年のものです。この20年の間に、国が考えるオンライン診療(遠隔診療)はまさに様変わりしたといえるのではないでしょうか。
まとめ:医師と医療機関と国が協力して推進を
厚生労働省や国のやることが遅いのは事実です。それによって日本の医療が遅れたこともあります。そのたびに厚生労働省はマスコミに叩かれています。
しかし厚生労働省の慎重姿勢のおかげで助かった命も少なくありません。
患者や国民の立場から考えると、遠隔医療を行う医師や医療機関が確実に安全であることを示し、国がそれを「そこまでやれるのであれば、許可しましょう」という形で支援することが、最も望ましい姿であるといえるのではないでしょうか。
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厚生労働省の告知に基づき、当クリニックでの初診は来院で受診して頂いた上で、
再診時よりオンライン診療による受診が可能となります。
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