Telemedicine Report
記事リリース日:2018年4月17日 / 最終更新日:2019年1月21日
高血圧の治療はオンライン診療(遠隔診療)との相性が良さそうです。東京女子医科大学が、オンライン診療(遠隔診療)による高血圧治療の効果を確かめる実証研究を行っているほか、いくつかのクリニックが「オンライン診療(遠隔診療)の高血圧治療」に取り組んでいます。
大学教授や地域の医師たちの取り組みが成功すれば、財政難にあえぐ日本の医療が必要としている「安くて効果が出る治療」を実現できるかもしれません。
さらに、人工知能(AI)を使った未来の治療にも一歩近づくかもしれません。
目次
東京・新宿のAクリニックは、「通院不要の高血圧治療」というキャッチフレーズでオンライン診療(遠隔診療)をPRしています。
Aクリニックはオンライン診療(遠隔診療)の高血圧治療に適した患者として、
を想定しています。
Aクリニックでオンライン診療(遠隔診療)の高血圧治療を受けるには、同院に予約をして従来型の対面方式による初診を受ける必要があります。
オンライン診療(遠隔診療)からスタートすることはできません。
初診では、医師による問診と診察が行われます。
ここで、患者の高血圧が本態性高血圧なのか二次性高血圧なのかが分かります。二次性高血圧とは、他の病気が高血圧の症状を起こしている状態です。
二次性高血圧の場合、まずはその「他の病気」を治療しなければならないので、別の専門医を紹介することもあります。
一般的に「高血圧」と呼ばれているのは、本態性高血圧のほうです。本態性とは「原因が分からない」という意味です。
Aクリニックのオンライン診療(遠隔診療)の高血圧治療の対象は、本態性高血圧になります。
医師が本態性高血圧であると診断すると、患者には血圧を下げる薬「降圧剤」が処方されます。患者は日常生活の中で降圧剤を飲むことになります。
さらにAクリニックでは患者に、血圧測定を指導しています。医師は患者から血圧測定の結果を聞き、治療の調整などを行います。
処方される降圧剤の量は2カ月分です。つまり患者は、2カ月後に再び医師の診察を受けて2カ月分の降圧剤をもらう必要があります。
Aクリニックでは、この2回目の再診からオンライン診療(遠隔診療)がスタートします。
患者はスマホ、医師はパソコンを使って、ビデオ通話(テレビ電話)で診察を行います。医師が「問題がない」と判断すると、次の2カ月分の降圧剤と処方箋を宅配便で患者のところに送ります。
では、ビデオ通話で医師が「問題がある」と判断した場合はどうなるのでしょうか。
このときも薬の微調整などで済む範囲であれば、オンライン診療(遠隔診療)を継続します。降圧剤には多くの種類があるので、薬を替えたりします。
Aクリニックでは極力オンライン診療(遠隔診療)で治療を進めることで、オンライン診療(遠隔診療)のメリットを最大限引き出そうとしているのです。
もちろん、薬の変更では症状を抑制できないときはすぐに対面診療に切り替えます。
Aクリニックのオンライン診療(遠隔診療)の高血圧治療は医療保険の対象なので、治療費は3割負担で済みます。
また治療費は、対面診療より若干割安になるとしています。対面診療だと、クリニックは患者に生活習慣管理料という特別な費用を請求できるのですが、オンライン診療(遠隔診療)ではこれを請求できません。クリニック側としては収入減になるのですが、患者にとっては治療費が低く抑えられるメリットがあります。
ただ、薬の宅配料は患者負担となります。しかしこれも、通院にかかる交通費より割安になるので、トータルすると患者のメリットは増えるでしょう。
Aクリニックは、オンライン診療(遠隔診療)の高血圧治療に取り組む狙いとして、次の6点を挙げています。
国の規制緩和というチャンスを活用し、オンライン診療(遠隔診療)の優れた点を証明することで、日本の医療の改善に取り組むということです。
徳島県のB病院では高血圧のほかに、脂質異常症、高尿酸血症(痛風)、糖尿病の治療でオンライン診療(遠隔診療)を取り入れています。
B病院でオンライン診療(遠隔診療)を受けることができるのは、6カ月以上同病院に通院していて、症状が安定している患者です。
Aクリニックが2回目の受診からオンライン診療(遠隔診療)をスタートさせているのと比べると、かなり慎重にオンライン診療(遠隔診療)を進めているといえます。
ただB病院では、90日分の処方せんを出しています。
オンライン診療(遠隔診療)の頻度は3カ月に1回となっているようです。
そのほかの段取りはAクリニックと同じです。
なお、脂質異常症とは違いますが、肥満のお悩みでダイエットや治療をお考えの方は、対面診療の必要が無い、当クリニックのオンライン診療(遠隔診療)で治療が可能となっております。
東京女子医科大学は2016年9月、オンライン診療(遠隔診療)関連企業と組んで、オンライン診療(遠隔診療)の高血圧治療の実証研究を開始しました。
高血圧患者を、オンライン診療(遠隔診療)を受ける人と対面診療を受ける人に分けて、
などを調べます。
もし新しい治療法が従来の治療法より劣っていれば、わざわざ新しい治療法を導入する必要はありません。
オンライン診療(遠隔診療)は新しい治療法なのでこれを普及させるためには、従来の治療法である対面診療より優れていることを証明する必要があるというわけです。
この実証研究の目玉は、最新の自動血圧計です。
オンライン診療(遠隔診療)を受ける患者にこの血圧計を渡し、自宅で毎日計測してもらいます。この血圧計は患者のスマホと連動するので、計測したデータがブルートゥースでスマホに飛び、スマホに入ったデータが東京女子医科大学に送信されるのです。
今回の実証研究でも、テレビ電話(ビデオ通話)を使います。これは一般的なオンライン診療(遠隔診療)と同じです。
そして今回は、チャットも使って患者と医師が文章でやりとりできるようにしました。
この実証研究は2019年3月まで行います。
東京女子医科大学の実証研究は、結果次第でオンライン診療(遠隔診療)の普及をかなり強く後押しすることになるでしょう。
ではオンライン診療(遠隔診療)の先には何があるのでしょうか。
それはAI(人工知能)による診療です。
高血圧と糖尿病には、共通した性質があります。それは、
ということです。
そのため、
が欠かせません。
この2つの治療の特色が、AI+オンライン診療(遠隔診療)にとてもマッチするのです。
AIを使った治療とは、コンピューターが莫大な量のデータを分析し、そこから最適な治療を導き出し、医師に提案することです。
もう少し具体的に説明します。
例えばある患者の血液検査の数値が、急激に上昇したあと安定し、その後再び上昇したとします。AIは世界中のデータから、過去にそのような数値の変化をした患者が、その後どのように変化したのかを調査します。どの治療が効果的で、どの治療が効果的でなかったかも調べ上げます。治療を中断したときにどれほど症状が悪化したか、というデータも調べます。
AIはその調査結果から、医師に「その患者にはこのような治療計画を示したらどうか」と提案するのです。
もちろん、最終的にその治療計画を採用するかどうかは医師と患者の話し合いで決まりますが、医師も患者も「AIが世界中のデータを調べてくれた」のであれば安心できます。
東京女子医科大学のオンライン診療(遠隔診療)の高血圧治療の実証研究では、患者が自宅で計測した血圧の数値が、自動で東京女子医科大学に届きます。データの取得に、医師や患者の手をほとんどわずらわされることがないのです。
AIの判断は、データが多ければ多いほど正確になっていくので、オンライン診療(遠隔診療)で次々データを集めてくればより確かな治療が可能になるわけです。
AI医療には、オンライン診療(遠隔診療)が欠かせないのです。
高血圧は誰もが知っている症状ですが、これを簡単に説明することは意外に難しいのではないでしょうか。
それで、高血圧の基本知識についておさらいしておきましょう。
血圧の値が140/90mmHg(家庭での計測は135/85mmHg)以上の場合、高血圧と診断されます。国内には4,300万人の高血圧患者がいるとされています。
高血圧と診断されても、患者には症状はありません。しかし高血圧を放置すると、脳卒中、心筋梗塞といった「死に至る病」に進むほか、慢性腎臓病を引き起こすこともあります。慢性腎臓病になると人工透析を一生続けなければなりません。
高血圧であれば降圧剤を飲むだけですが、人工透析になると週3回、1回4時間の時間が奪われます。
一般的な高血圧のことを「本態性高血圧」といいます。本態性とは原因が分からないという意味です。肥満や運動不足、食生活の偏りなどによって本態性高血圧が発症することは分かっていますが、肥満、運動不足、食生活の偏りを改善しても治らないことがあります。だから「本態性(原因が分からない)」なのです。
本態性高血圧の治療では降圧剤という薬を使いますが、これは高血圧の完治を目指す薬ではなく、血圧を下げる薬です。高血圧患者の血圧を下げることで、死に至る病や人工透析を回避するのが、高血圧の治療の目的です。
オンライン診療(遠隔診療)は、スマホを使うという特徴があります。スマホは使う人に楽しみを与える道具なので、治療の苦痛が少し減るかもしれません。
治療の苦痛が減ると、患者が治療に積極的になるので、治る確率が高くなることが期待できます。
オンライン診療(遠隔診療)は、LINEやインスタグラムを操る感覚で治療を受けられる点が、優れているのです。
多くの専門家が「オンライン診療(遠隔診療)は拡大する」と見ています。便利で苦痛が少ない未来の医療が、まさにいまつくられているというわけです。
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