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Telemedicine Report
記事リリース日:2018年4月25日 / 最終更新日:2019年1月21日
厚労省による遠隔診療の正式名称がオンライン診療に変わった2018年は「オンライン診療元年」と言われるようになるでしょう。
※遠隔診療の正式名称の変更についての記事はこちらをご覧ください。
2018年4月から医療保険の適用範囲がこれまでより大幅に拡大したからです。医療保険が使えるようになると、患者の治療費負担が減るので、オンライン診療(遠隔診療)が受けやすくなります。また、患者の治療費負担が減れば医師もオンライン診療(遠隔診療)を提供しやすくなるため、この新しい診療形態は一気に拡大することが期待されます。医療保険を使ったオンライン診療(遠隔診療)がどのように変わったのか、詳しく解説します。
目次
2018年4月からスタートする新オンライン診療制度の目玉は、医療保険制度の診療報酬の中に「オンライン診療料」が新設されたことです。診療料は、治療を行った医師側が受け取る診療報酬のことで「医療の値段」です。診療報酬は原則、患者が3割、医療保険が7割負担します。医療保険を使ったオンライン診療(遠隔診療)を実施するには、患者も医師も次の「6個のルール」に守らなければなりません。
オンライン診療料は700円で、オンライン診療(遠隔診療)を行った医師は700円の収入になります。患者はこの3割、210円を自己負担することになります。このオンライン診療(遠隔診療)はひと月に1回しか算定できません。仮に医師と患者の間でひと月の間に2回以上オンライン診療(遠隔診療)を行ったとしても、医師は1回分の700円しかもらえません。
オンライン診療(遠隔診療)をスタートできるのは、治療を開始してから6カ月後(7カ月目から)になります。治療開始から6カ月以内は従来の対面診療を行わなければならないのです。さらにその6カ月間の対面診療と7カ月目からのオンライン診療(遠隔診療)を行う医師は、同一人物でなければなりません。たとえば2019年1月に治療(対面診療)をスタートさせたら、オンライン診療(遠隔診療)を実施できるのは7月からとなります。
オンライン診療(遠隔診療)の実施は、2カ月連続までが限度となっています。例えば、2019年7月と8月にオンライン診療(遠隔診療)を行ったら、9月は通常の対面診療を行わなければならないのです。9月に対面診療を行えば、10月と11月はオンライン診療(遠隔診療)を行うことができます。
さて、ここまでの解説で、次の2つの疑問がわくと思います。「なぜ月1回しかオンライン診療(遠隔診療)を実施できないのか」「なぜオンライン診療(遠隔診療)は連続2カ月しか行えず、3カ月連続はNGなのか」厚生労働省はこの疑問について説明していませんが、次のように推測できます。厚生労働省は、オンライン診療(遠隔診療)の実際は「医師が患者の様子を観察して処方せんを出す診療」を想定しているのではないでしょうか。生活習慣病ですと、クリニックの医師は患者に大抵2カ月分の薬を処方します。そのため、「患者と医師が対面しない期間が2カ月くらい空くのは問題ないが、それ以上空いてしまうと診療に支障が出る可能性がある」と考えているのかもしれません。こうしたルールがあることから、オンライン診療(遠隔診療)の流れは、以下のようになると考えられます。<オンライン診療と対面診療のシミュレーション>
誰でも医療保険を使ったオンライン診療(遠隔診療)を受けられるわけではありません。オンライン診療(遠隔診療)を受けられるのは特定の病気を持つ人に限られます。その病気とは次の通りです。生活習慣病(脂質異常症、高血圧症、糖尿病)、難病、モヤモヤ病やパーキンソン病などの特定疾患、認知症、精神疾患などです。医師は患者に治療計画を策定し、継続的な生活習慣病管理や難病外来指導管理を行わなければなりません。医師が生活習慣病管理や難病外来指導管理などを行うと、医師側は診療報酬として生活習慣病管理料や難病外来指導管理料を得ることができます。ただ対面診療からオンライン診療(遠隔診療)に切り替わったら、医師側は生活習慣病管理料などではなく、この後解説するオンライン医学管理料を請求(算定)することになります。
オンライン診療(遠隔診療)を行うには、医師が対面診療とオンライン診療(遠隔診療)を組み合わせた療養計画を作成しなければなりません。また、オンライン診療(遠隔診療)で使う情報通信機器は、厚生労働省が定めたものを使わなければなりません。
オンライン診療制度では、上記で解説したオンライン診療料に加えて、オンライン医学管理料も新設されました。オンライン医学管理料の内容について解説する前に、「オンライン診療料1回700円」について考えてみます。
今回の新オンライン診療制度が導入されるまでは、スマホやパソコンやテレビ電話などのIT機器を駆使したオンライン診療(遠隔診療)は、電話による指導と同じ扱いでした。医師による電話での患者への指示は「再診料」の中に含まれ、その金額は720円です。そうなんです。オンライン診療料700円は、電話での再診料720円より安く設定されているのです。オンライン診療(遠隔診療)で使うIT機器は、電話よりはるかに進化しているので、患者と医師のコミュニケーションは深まります。しかも医師側は高額なハードウェアとソフトウェアを用意しなければならず、出費もかさみます。これでは「割に合わない」と感じる医師もいるでしょう。そこで、オンライン医学管理料という「加算」を行うことにしたのです。
医師がオンライン診療(遠隔診療)を実施すると、医師側はオンライン診療料700円とオンライン医学管理料1,000円を受け取ることができます。患者の負担は3割なので、患者が負担する金額は510円(=(700円+1,000円)×30%)です。オンライン診療(遠隔診療)なので、このお金はスマホを経由してクレジットカードで支払うことになります。
医師がオンライン診療(遠隔診療)を実施するには、医師が務める病院やクリニックが、オンライン診療料の施設基準を満たしている必要があります。施設基準を満たすには、病院やクリニックが厚生労働省に申請し、受理されなければなりません。同省は医師側が使用するオンライン機器のセキュリティなどを確認します。
オンライン在宅管理料という仕組みも新設されました。ここでいう「在宅」とは、外出困難な患者が医師の訪問診療を受けて療養している状況をさします。オンライン在宅管理料は月1回1,000円で、在宅時医学総合管理料に加算される形で医師側に支払われます。そこでまず、在宅時医学総合管理料についてみていきましょう。
在宅時医学総合管理料とは医師が患者宅にうかがって訪問診療をしたときに訪問診療料とは別に受け取ることができる報酬です。訪問診療料は1回8,330円です。訪問診療料は1回実施するごとに発生しますが、在宅時医学総合管理料は1カ月に1回発生します。その金額は患者1人につき5,100~54,000円になります。金額は1つの建物内に住んでいる患者の人数や患者の病気の具合などによって異なります。
例えば医師が、ひと月の間に1回訪問診療を行い、1回オンライン診療(遠隔診療)を行ったとします。この場合医師側は、次の金額を得ることができるわけです。
訪問診療料(8,330円)+在宅時医学総合管理料(5,100~54,000円)+オンライン在宅管理料(1,000円)=14,430~63,330円
在宅の精神疾患患者の場合、「オンライン在宅管理料」が「精神科オンライン在宅管理料」に変わります。「在宅時医学総合管理料」も「精神科在宅患者支援管理料」に変わります。 仕組みは同じです。
最後に紹介するのは、遠隔モニタリング加算です。遠隔モニタリングとは、外出が困難で自宅で治療を受けている患者が高度な医療機器を使っているときに活躍するシステムです。医療機器とインターネットを接続し、医療機器のデータなどを、遠隔地にいる医師が把握するのです。今回の新オンライン診療制度で新設された遠隔モニタリング加算は、自宅で在宅酸素療法または在宅持続陽圧呼吸療法という治療を受けている患者に関係する診療報酬です。在宅酸素療法とは、自宅に酸素を供給する機械を置き、その酸素を患者が吸う治療です。肺の病気にかかると、空気中の酸素では濃度が薄いため、酸素だけを患者に送るのです。在宅持続陽圧呼吸療法は、睡眠時無呼吸症候群の患者に対して行われる治療です。この病気は寝ているときに一時的に呼吸を止めてしまう症状を引き起こします。患者は就寝時にマスクを装着し、専用機器で空気を強制的に送り込みます。これらの機械や機器から情報を得て、医師が遠隔モニタリングを行うと、医師は遠隔モニタリング加算という診療報酬(ひと月1,500円)を得ることができるのです。
オンライン診療(遠隔診療)の医療保険適用が拡大したことは、患者にも医師にも嬉しいニュースといえるでしょう。しかしルールが厳しすぎる印象を持つ人も少なくないでしょう。「使いづらい」と感じた人もいるのではないでしょうか。そこで次回は「新制度の窮屈さ」について考えてみたいと思います。参考資料:オンライン診療の推進(厚生労働省)https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/health/dai4/siryou1.pdf
※本記事はシリーズとなっており、続きの記事がございます。次記事『【2018年版 動き出すオンライン診療2】かなり窮屈なルール?』はこちらからご覧ください。
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