3つの縛り「6カ月後からルール」「連続2カ月までルール」「同じ医師ルール」
医師が医療保険を使ったオンライン診療を行うには、最低でも次の3つのルールをクリアしなければなりません。
【6カ月後からルール】初診から6カ月以上経過しないとオンライン診療を開始できない
【連続2カ月までルール】オンライン診療は連続2カ月しか行えない(3カ月連続はNG。1カ月開ければオンライン診療を再開できるが、対面診療の間隔が3カ月超空いてはならない)
【同じ医師ルール】オンライン診療は初診(対面診療)を担当した医師が行わなければならない
【連続2カ月までルール】が少し複雑なので、NG例とOK例を表で説明します。これはすでに初診から6カ月以上が経過している場合です。
NG1の例は3カ月連続でオンライン診療を受けているので認められません。OK1かOK2のように対面診療をどこかで受けなければなりません。
NG2の例では、オンライン診療は3カ月連続ではないのですが、4月1日~7月1日までの「3カ月+1日=3カ月超」の間に1回も対面診療が行われていないので認められません。5月1日に受診をしない場合、OK3のように6月1日に対面診療を受けないと7月1日のオンライン診療が認められなくなります。
オンライン診療の魅力が削減?
さらに【連続2カ月までルール】はオンライン診療の魅力を薄めることになりかねません。
糖尿病や脂質異常症などが軽症で症状が安定している場合、クリニックの医師は患者に2カ月分の薬を処方します。対面診療のみを選択した場合は下の表の通り、例えば4月1日に受診すれば、次回の受診は6月1日でいいわけです。
軽症で安定している生活習慣病こそオンライン診療が向いていると考えられますが、このケースではあまりオンライン診療の恩恵を受けられません。
患者の症状が安定していて、4月1日にオンライン診療を受けて2カ月分の薬を処方してもらえば、5月は受診しなくても大丈夫です。しかし6月1日の受診でオンライン診療を受け、しかも7月の受診を休んでしまうと、「3カ月超対面診療を受けない」ことが確定してしまうので、6月1日は対面診療を受けなければならなくなるのです。
軽症の糖尿病を持つサラリーパーソンは「薬をもらうだけなので、オンライン診療だけで済ますことができれば楽なのに」と感じるのではないでしょうか。
事実上の後退?
新オンライン診療制度では、初診は必ず医師と患者が面談する対面診療でなければなりません。
厚生労働省は2017年に、保険者が実施する自由診療の禁煙外来に限っては、初診から最後の診療まですべてオンライン診療でもかまわない、との方針を示しました。そのため今回の新オンライン診療制度は「後退」した印象を持つ人がいるかもしれません。
対面診療とオンライン診療の分業は認められない
オンライン診療は初診(対面診療)を担当した医師が行わなければならないというルールも、柔軟性が低い内容といえそうです。
例えば、ITが苦手な高齢の院長と、ITが得意な若い副院長の2名体制のクリニックがあった場合、若い副院長がオンライン診療に専念するという分業制を敷くことができないのです。院長の患者がオンライン診療を希望したら、院長がオンライン診療を行わなければならないのです。もしくは若い副院長がまずは6カ月間対面診療で診てからでないと、副院長によるオンライン診療を始めることはできないのです。
「ずっとオンライン診療のままというのはおかしい」というスタンス
先ほどの厚生労働省の課長は上記のようなシチュエーションも想定していて、次のように回答しています。
- ・オンライン診療は患者と医師の関係が構築されていることが前提
- ・対面診療の延長線上でオンライン診療を使うことが基本
- ・「初診からオンライン診療を認めるべき」という意見は極端すぎる
- ・オンライン診療に切り替えた後、ずっとオンライン診療のままというのもおかしい
課長のこの回答は、「6カ月後からルール」「連続2カ月までルール」「同じ医師ルール」をつくった意図を説明しています。