※本記事はシリーズとなっておりますので前記事からの閲覧をおすすめ致します。
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※オンライン診療(遠隔診療)のメリットは、患者が病院やクリニックなどの医療機関に出向かなくてもよいことです。患者が医療機関に行かなくてよくなれば「移動がなくなる」ので、患者の負担が減ります。
オンライン診療(遠隔診療)を活用した在宅でのお看取りの例
オンライン診療(遠隔診療)と訪問診療を組み合わせて、在宅での質の高いお看取りを成功させた事例として、福岡市のTクリニックのケースを紹介します。
福岡市のクリニックでの事例
福岡市のTクリニックの事例は2018年2月、日本遠隔医療学会で発表されました。
Tクリニックは訪問診療専門のクリニックで、2名の医師が在籍しています。Tクリニックには、訪問診療の効率性の悪さという課題と、訪問診療がオンライン診療(遠隔診療)にとってかわられてしまうのではないかという危機感がありました。
それで自院でもオンライン診療(遠隔診療)を訪問診療に組み込むことにしたのです。
Tクリニックの医師が同学会で報告した患者は80代の男性で、末期の悪性リンパ腫を発症していて余命1、2カ月という状態でした。患者と家族は入院を選択せず、自宅で暮らしていました。Tクリニックは週2回の訪問診療を行い、その間をオンライン診療(遠隔診療)で埋めることにしました。
患者側のオンライン診療(遠隔診療)の受け答えは、同居していた娘が受け持ちました。
結論を先に述べると、家族が満足できるお看取りができました。それは次の3つが実現できたからです。
- ・臨時訪問診療をするかどうかの判断が可能になり医師の移動時間を削減できた
- ・適切な判断をくだすことができた
- ・患者や家族と信頼関係を築くことができた
1つずつみていきましょう。
臨時訪問診療をするかどうかの判断が可能になり医師の移動時間を削減できた
これまでのTクリニックの訪問診療では、診療時間よりも移動時間のほうが長くなることがありました。家族が急変と判断してTクリニックの医師を呼んだ場合でも、医師が駆けつけてみると医療的な処置が要らないことは珍しくありません。
家族でも行える処置で済むのに、訪問診療医を呼んでしまっては、医師の負担と医療費が増えるだけです。
ところがオンライン診療(遠隔診療)を導入すれば、そのような「無駄な訪問診療」を行わないで済みます。臨時訪問診療が必要かどうか、オンライン診療(遠隔診療)のテレビ電話を使って確認できるからです。これにより「次の定期の訪問診療まで待つことができる」と判断できるわけです。
適切な判断をくだすことができた
今回のTクリニックのオンライン診療(遠隔診療)では、医師は患者の発赤を確認できました。これは悪性リンパ腫に特有の症状でしたので、医師は臨時の訪問診療はしませんでした。ただ軟膏を処方する、という適切な治療判断は行うことができました。
またオンライン診療(遠隔診療)によって、患者の排尿回数が減ったことと、尿の色が濃くなる濃縮尿を確認することもできました。濃縮尿は腎臓の機能低下のサインですので、最期が近くなっていることがわかります。
さらにオンライン診療(遠隔診療)で患者の痙攣(けいれん)を確認したときも、医師は訪問診療を実施することなく、家族に座薬を中止するよう指示しました。
そして、患者が自分で排尿できなくなったことを家族からオンライン診療(遠隔診療)経由で知ることができた医師は、最期が近いから親族を呼ぶよう助言しました。
医師はこのときになって初めて臨時訪問診療を実施し、お看取りをすることができました。
この事例は、「オンライン診療(遠隔診療)はお看取り期に入った患者の様子をこれだけ正確に把握できる」ということを示しています。
Tクリニックの医師は、患者宅に訪問看護に入っている看護師から電話で情報を得ても、医療的な判断は下しにくい、と述べています。そうなると医師の本能として「臨時訪問診療を行って実際に様子を見たい」となってしまいます。
しかしオンライン診療(遠隔診療)ではビジュアル情報が得られるので、臨時訪問診療が要るか要らないかを適切に判断できたといいます。
患者や家族と信頼関係を築くことができた
Tクリニックの医師は、オンライン診療(遠隔診療)では患者側と医師が常に顔を確認できたので、安心感を醸成できたと述べています。
オンライン診療(遠隔診療)を導入すると、患者は文字通り24時間365日にわたって医師とつながることができるからです。
亡くなった80代の男性患者の娘には、認知症を発症している母親もいるのですが、「母親がかかっている物忘れ外来でもオンライン診療(遠隔診療)を導入してもらいたい」と話しているそうです。それだけ今回のオンライン診療(遠隔診療)によるお看取りに満足できたということです。