Telemedicine Report
記事リリース日:2018年7月12日 / 最終更新日:2019年1月21日
自分が病気をして病院に行ったとします。受付で「医師による診察を希望しますか。それとも人工知能(AI)による診察を希望しますか」と聞かれたらどちらを選択するでしょうか。
恐らく多くの人は、「AIなんて信用できない。医師による診察を希望します」と回答するのではないでしょうか。
しかし近い将来、AI診察を希望する人のほうが増えるかもしれません。なぜなら、医療AIが目覚ましい発展を遂げているからです。
遠隔診療はITというテクノロジーの発展によって実現した「未来の医療が現実のものになった」医療です。そこでシリーズ「テクノロジーが医療を変える」では、医療現場がテクノロジーによって様変わりする様子を追っていきます。
目次
AIが最初に注目されたのは、医療分野ではなく頭脳ゲームでした。チェスの世界トッププロがAIに負け、続いて将棋界でもAIが躍進しました。そしてルールの複雑さから人類最後の砦と言われていた囲碁でも、AIが勝ってしまったのです。
AIがなぜそこまで賢くなれるのかというと、プロ棋士たちの過去の何百万という対戦を学習させているからです。さらに2台のAIを戦わせて特訓することも可能です。学習も特訓も、飽きと疲れという欠点を持つ人間は苦手です。しかしAIはプログラマーが中止させるまで、24時間1秒も休まず学習と特訓を繰り返すのです。
医療分野におけるAIでも、頭脳ゲーム界と同じことが起きる可能性があります。日本中の医療情報というビッグデータにアクセスさえできれば、1人の医師が生涯かけても蓄積できない知識量と情報量をAIに学ばせることができるのです。
医療事故や判断を誤りやすい状況を学ばせれば、AIが間違った判断をする確率も限りなくゼロに近づくでしょう。
さて、近い将来の病院の話に戻します。
病院の受け付けで「医師による診察を希望しますか。それとも人工知能(AI)による診察を希望しますか」と聞かれ、さらに次のように言われたらいかがでしょうか。
「当院の医療用AIは、医師10万人分の知識を学習済みで、日本とアメリカの過去50年分のすべての医学論文を暗記しています」
医師は人間なので小さな病変を見逃すかもしれませんし、誤診してしまうかもしれません。しかしそれだけ優秀な医療用AIなら、どれほど些細な兆候を見逃さず、適切な治療法を提示してくれるのではないでしょうか。
「AI診療にまず診てもらって、AIが出した結論を人間の医師に判定してもらえばいいかもしれない」
そう考えないでしょうか。
2017年3月に慶應義塾大学医学部を卒業した中野哲平氏(1992年生まれ)という方がいます。中野氏は株式会社NAM Asia Hong Kongという会社を香港に設立しました。 NAM社の事業目的は、医療にフォーカスしたコンピューターソフトウェアとハードウェアの開発、となっています。
これを聞いただけでは、若い秀才が医療ベンチャー企業を立ち上げた、という話にすぎません。しかしNAM社が、無料通話アプリLINEとAIを使った、チャットボット型の電子カルテ兼問診ボット「ドクターQ」を開発したことで、一躍注目が集まりました。
ドクターQを見ていく前に、専門用語について解説します。
チャットボットとは、チャットとロボットを組み合わせた造語です。LINEのように即座に文章のやりとりができるのがチャットです。チャットボットは会話をする相手がロボット、つまりAIになります。
AIが人のチャット文章の意味を読み解き、適切な回答をするのです。
電子カルテとは、患者カルテを取り込んだコンピューターのことで、病院やクリニックで普通に使われているIT機器です。
問診ボットとは、医師が患者に症状を尋ねる問診と、チャットボットを組み合わせた造語です。問診ボットでは、AIがチャットを使って患者に質問をして、患者がそれに答えるとAIが適切な判断するシステムです。
それでは以上を踏まえた上で、ドクターQが行ってくれる仕事っぷりを見ていきましょう。
NAM社のドクターQが行ってくれる仕事内容は、
以上の3つに分かれます。
NAM社のドクターQは、AI機能でLINEを使って患者に質問し、副作用が出ていないかどうかなどの情報を集めます。
ドクターQは次に、集めた情報について、
これらの判断を下します。
AIが情報の重要度と誰向けの情報なのかを判断するのです。
ドクターQを使っている患者は、LINE上で自分の電子カルテや薬情報を見ることができます。
ドクターQが集めた患者情報は、医師が閲覧することができます。
医師が必要と認めれば、医師は患者とLINEを使ってチャットで会話をすることができます。
このときすでに医師の手元にはAIが集めた患者情報があるので、医師は患者から病気の核心部分だけを聞き取ればいいのです。医師が患者の基本情報を獲得する時間を節約できるというわけです。
NAM社は、ドクターQを医療機関に無償で提供するとしています。
しかし、ドクターQの開発やサービス提供には、システムづくりなどに多額の費用が必要です。そしてドクターQを運営するNAM社は株式会社なので利益を上げないと存続できません。しかもドクターQは日本の医療保険では使えないので、ドクターQを運営しても医療保険制度からお金は入って来ません。
ではどのようにしてNAM社はドクターQで利益を上げるのでしょうか。ドクターQのビジネスモデルはどのようになっているのでしょうか。
ドクターQのビジネスモデル(儲け方法)は、広告収入です。LINEを使うときに医師も患者もスマホ画面を見るので、医療機関にスマホに表示する広告を出してもらい、広告料を収入にする考えです。
またドクターQを利用する患者は健康意識が高いと推測できることから、NAM社は高血圧や糖尿病などが判定できる検査キットを販売していく考えです。健康食品の販売も行っていきます。
テクノロジー、IT、AIといった分野は、野心家の社長がぐいぐい引っ張るNAM社のようなベンチャー企業が注目されがちですが、医療とAIの研究には大手企業や名門大学病院も注目しています。
京都大学付属病院と富士通が取り組んでいる医療AI研究は、「これぞ医療AI」といった印象を受けます。詳しく見ていきましょう。
京大病院と富士通などは、2018年から2020年までの2年間にわたって医療AIの共同研究を行います。京大医学部は、医療情報AIシステム学講座という部署も新設しました。
まずは京大病院の電子カルテ用コンピューターの中に眠っている膨大な量の患者情報をデータクレンジングします。クレンジングとは「洗顔」という意味ですが、データクレンジングとは、そのままでは解析に使えないデータを整理することを意味します。
さすがのAIも、医師や看護師たちがそれぞれの「書き癖」で書いた文章から重要な情報を抜き出すことは苦手とします。
そこで電子カルテ内の文章の表記を統一したり、文章形式を直したりするデータクレンジングが必要になるわけです。
データクレンジングさえしてしまえば、後はAIが一気に電子カルテ情報を学んでいきます。AIに入力する情報が多くなればなるほどAIは賢くなります。
京大病院と富士通は、最終的にAIに、
を分析させようとしています。
AIがこれらを覚えると、新しい患者の症状を入力するだけでAIが病気を鑑別したり、医師が見落としたCT画像のわずかな病変もAIが見つけたりすることができます。
AIの話になるとすぐに「人の仕事がなくなる」といった議論になりがちですが、それはかなり先の話です。AIはまず、仕事をする人たちの強力なアシスタントになるでしょう。
それは医療も同じで、AIが新しい治療法を創造したり、新薬を開発したりする世界はかなり先のことでしょう。AIは当面、新しい治療法を創造する手助けをしたり、新薬開発の支援をしたりすることになるでしょう。
そのことによって、確実に画期的な治療法と新薬が生まれるでしょう。
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