記事リリース日:2018年9月5日 / 最終更新日:2019年1月21日
動き始めたばかりの
オンライン診療が直面した課題とは
医療保険制度上のオンライン診療(遠隔診療)が本格スタートから約3カ月が経過した2018年6月下旬、「オンライン診療カンファレンス」というイベントが開かれました。
このなかで厚生労働省の担当者が、オンライン診療の現状の課題を指摘したうえで、さらにその将来像を示しました。
このイベントは医師のみを対象としていましたが、話の内容は一般の人や患者が「オンライン診療が今後どのようになるのか」をイメージしやすいものでしたので紹介します。
厚生労働省医事課が指摘する4つの課題とは
オンライン診療カンファレンスは、医師の開業支援などをしている株式会社エグゼメディカルなどでつくる「DOC TOKYO」という団体が東京都中央区で開きました。
今回のテーマは「クリニックにおけるオンライン診療の有効な活用方法と実施時の不安の解消」でした。
このなかで厚生労働省医政局医事課の課長補佐、奥野哲朗氏が基調講演を行いました。テーマは「オンライン診療の今後~ガイドラインを踏まえた医療機関の注意点」でした。
オンライン診療(遠隔診療)は正式に稼働したものの、手探り状態のクリニックが少なくないため、この時期に相応しいテーマといえるでしょう。
奥野氏は、「日本の医療の諸課題に対応するためにオンライン診療は期待できる」と指摘しました。
奥野氏が指摘した日本医療の課題とは次の4つです。
地域包括ケアの推進
地域包括ケアの推進は、入院治療を減らし、在宅診療や外来診療を増やす政策です。入院治療の増加は、医療費の高騰や医療保険財政の悪化を招くばかりか、患者の生活の質を落としてしまうこともあります。
一方、自宅で治療を受ける在宅診療や外来診療は医療費を抑制でき、患者は自宅を離れずに済むので安定した生活を送ることができます。
地域包括ケアとは、病気を持っている人を病院だけに押しつけるのではなく、地域の社会・医療・介護資源を広く活用して病気の人やお年寄りを包括的にケアしていこう、というものです。
医師の働き方改革
医師の働き方改革は、医師の労働環境が依然として改善されていない問題と、女性医師が増えているにも関わらず、女性医師が働きやすくなっていない問題の2つがあります。
女性医師は妊娠出産や子育てなどのライフイベントのためにキャリアが中断しやすいのですが、これを改善できれば男性医師の激務を緩和できます。
医師偏在
医師偏在は、都心部の一部では「医師あまり」が起きているのに、地方は相変わらず深刻な医師不足に悩まされている問題です。
生産年齢人口の減少
生産年齢人口の減少は、医療を含む社会保障制度を財政面で支える若手が減っている問題です。
一方で医学の進歩によって高額な薬が生み出され、非生産年齢人口は増えています。非生産年齢人口は病気が多くなるので医療費がかさみます。
すなわち現状の医療財政は、収入が減っているのに支出が増えているのです。企業であれば破綻する構図です。
4つの課題をオンライン診療はどのように解決するのか
それでは次に、厚生労働省の奥野氏が指摘した4つの日本医療の課題に対し、オンライン診療(遠隔診療)はどのように貢献できるのか検討してみたいと思います。
地域包括ケアの推進の課題
地域包括ケアの推進の課題は、不要な入院を減らし在宅医療を充実させようという取り組みですので、オンライン診療は即戦力になります。
介護保険制度により、訪問看護の体制が充実してきています。つまり在宅医療を受けているお年寄りが、オンライン診療で使うスマホやタブレットを扱う必要がないのです。訪問看護でお年寄り宅にいる看護師がネットの向こうの医師とやり取りすることができるからです。
医師も訪問看護師に指示を出せるので安心できます。
医師の働き方改革の課題
医師の働き方改革の課題でもオンライン診療は貢献できそうです。なぜならオンライン診療は省力化が図れる医療だからです。
対面診療を行っている医師や医療機関は、患者を医療機関に迎え入れ、待たせて、診療して、再び待たせて治療費を請求しなければなりません。処方箋を渡して服薬指導する必要もあります。
これをオンライン診療に切り替えれば、患者を迎え入れる準備も、患者を待たせるスペースも不要になります。また服薬指導もオンラインに切り替えることは技術的には可能です。
そして患者は、オンライン診療によって通院という労力を省くことができます。
現在のIT技術をフル活用すれば、法律さえ整備されれば、医師が自宅でオンライン診療を実施することは可能です。実際、自分の専門外の治療をすることになった医師が、その専門の医師に治療法などを相談する「医師と医師間(D to D)のオンライン診療」では、医師が自宅に居ても実行できます。
つまり将来的には、ライフイベントなどで職場を離れて自宅にいる女性医師も、オンライン診療によって医療に参加してもらうこともできるわけです。
このような取り組みは、医師の激務緩和に役立つでしょう。
オンライン診療は地域を選ばないので、医師偏在の課題の解決にもつながります。医師が少ない地方にオンライン診療のシステムが根付けば、地方の人でも都心部の大学病院の最先端医療に接することが可能になります。
もちろんそのためには大学病院側の協力が必要になります。
生産年齢人口の減少の課題
生産年齢人口の減少の課題>は、医療保険制度の財政問題を引き起こしていました。オンライン診療の運営コストが安くなれば、医療費を抑制できるので財政改善に寄与することができます。
オンライン診療のコストは、現状は「高い」という指摘もあります。設備投資にお金がかかるからです。また患者はスマホかタブレットを持ち、それらをインターネットにつながなければならないので、一般の固定電話やガラケーと呼ばれる携帯電話よりは、所有するコストが高くなります。
しかしネットやITのコストは普及とともに安くなってきました。オンライン診療も関連設備の整備が終わった後はそれほどお金をかけずに運営できるはずです。
そもそもオンライン診療の目的の1つに省力化があるので、トータルコストは下がるはずなのです。
これは厚生労働省などが監視の目を光らせて「儲けすぎているところ」が出ないようにしなければならないでしょう。
その割に「使いにくくなっている」との指摘もある
厚生労働省も数々の課題を解決する手段としてオンライン診療(遠隔診療)に期待しているわけですが、しかし「新制度になった事で、逆にオンライン診療が使いにくくなった」という声も聞こえてきます。
オンライン診療にまつわる取り決め自体に課題があるわけです。
例えば2018年4月から、医師がオンライン診療を実施すると、医師側は医療保険制度の「オンライン診療料」を得ることができるようになりました。患者は3割負担で済みますし、医師側は確実な収入を確保できるのです。
これは一見すると「よいこと」にみえますが、しかし新制度の導入によって患者の対象が限られてしまったのです。オンライン診療を受けることができるのは、生活習慣病や難病などの病気を抱えている患者だけです。
皮膚科や耳鼻科、眼科などの領域の病気を発症している患者は、オンライン診療を受けることができないのです。
本来であればオンライン診療の真価が発揮できそうな分野で、発揮ができない仕組みとなってしまっているのです。
オンライン診療の普及を目指している日本遠隔医療学会から「新制度は内容が後退している」との声も漏れているのはそのためです。
さらにオンライン診療は、初診NGだけでなく、初診から6カ月以上経過しなければ受けられません。つまり初診から6カ月以内に病気が治ってしまえば、それはよいことではあるのですが、患者はオンライン診療を受けることはできません。
まだあります。オンライン診療を提供できるのは、患者が急変したときに30分以内に対面診療できる医療機関に限られてしまったのです。
オンライン診療はかつて「遠隔診療」と呼ばれていたように、そもそも離島やへき地の患者のためのサービスとして考えられてきました。しかしこの「30分対応」縛りのせいで、離島やへき地から遠く離れた医師は、そこの患者にオンライン診療を提供できなくなってしまったのです。これも「後退」とみる医師は少なくありません。
まとめ~まだまだ歩き始めたばかり
スタートしたばかりのオンライン診療(遠隔診療)を一言で言い表すと「潜在能力は高いが、まだその能力を最大限には使いきれていない」となりそうです。
オンライン診療はITを使って物理的に離れている医師と患者をつなぐ新しい試みなので、厚生労働省が慎重に進めようとしているのは無理もないところかもしれません。
しかしオンライン診療が患者にも医師にメリットが大きいことはわかってきているので、今よりも利用しやすくなり、より多くの人に知られ、広く普及・浸透することを願いたいものです。
当クリニックのED・AGA・肥満治療はオンライン診療が可能です。
料金設定も「予約料500円+お薬の送料一律500円+お薬代」のみとなっております。
厚生労働省の告知に基づき、当クリニックでの初診は来院で受診して頂いた上で、
再診時よりオンライン診療による受診が可能となります。
新橋ファーストクリニック診療科目