システム料を徴収するようになって患者が減った
オンライン診療(遠隔診療)を利用する患者が減っていることを報じたのは、日本経済新聞社系のサイト、日経スタイルの記事です。
記事によると、埼玉県のある皮膚科クリニックは2016年11月からオンライン診療を導入しました。
これはかなり早い段階での取り組みといえ、クリニックの院長がオンライン診療の将来性に期待したことがうかがえます。
このクリニックでオンライン診療を利用する患者は順調に増え、オンライン診療が公的医療保険の対象になる前月の2018年3月には30人になっていました。
オンライン診療利用患者がこれだけ増えたのは、オンライン診療の持つシステムが合理的なものだったからです。
例えばアトピー性皮膚炎の治療の場合、症状が安定すれば同じ薬や同じ保湿剤を定期的に処方していくことになります。
オンライン診療を使えば、患者は同じ薬と保湿剤を手に入れるためだけにクリニックに行かなくて済みます。
医師としても、オンライン診療なら患部を画像で確認できるので、しっかり患者を診たうえで、“いつもと同じ処方”を行うことができます。
オンライン診療は、患者と医師の双方にとってメリットしかありません。
しかしこの皮膚科クリニックのオンライン診療の利用患者は、2018年8月には5人にまで減りました。
30人が5人になったので8割以上減ったことになります。
一体何故なのでしょうか?
利用患者が減った原因は、皮膚科クリニック側がオンライン診療患者からシステム利用料500円を徴収するようになったからです。
患者たちは「余計なお金がかかるなら、通院する」と判断したわけです。
ではなぜ皮膚科クリニックがシステム利用料を徴収するようになったのでしょうか。
それは、アトピー治療を含め皮膚科の病気は、公的医療保険を使ったオンライン診療の対象から外れた為です。
公的医療保険が使えないので、オンライン診療の実施に必要なコストをシステム利用料として患者に請求したわけです。
精神科と小児科でも相次ぎ取りやめ
オンライン診療システム「クリニクス(CLINICS)」を開発・販売しているメドレーによると、オンライン診療は大きく減速している状況にあります。
同社がこれまでにクリニクスを販売した医療機関のうち、2018年9月までに数割程度の医療機関がクリニクスの使用を中断しました。
想定していたほどオンライン診療が拡大しない理由のひとつが、精神科と小児科で利用の中断が目立ったことです。
オンライン診療が公的医療保険の対象になる前は、精神科と小児科でオンライン診療の導入が目立っていました。
精神科や小児科の患者や家族は、通院困難に陥りやすい傾向が比較的高いため、通院しなくてよいオンライン診療が支持されたのです。
しかし、皮膚科疾患同様に、精神科疾患も小児科疾患も、公的医療保険が使えるオンライン診療の対象疾患にならなかったのです。
多くの患者が使えるようにしてほしい
先述の皮膚科クリニックの院長は「オンライン診療は患者の治療離脱を減らすのに有効な手段である」と述べています。
さらに院長は「皮膚科の病気の治療も、オンライン診療の保険診療の対象にしてほしい」と訴えています。
また、オンライン診療を導入している精神科医は、認知症やうつ病の患者の場合、症状が落ち着ていれば対面診療でも同じ薬を処方するだけのことが多いと指摘します。
それなら通院不要のオンライン診療のほうが患者のストレスを軽減でき、利便性が高いわけです。
この精神科医も「オンライン診療を利用できる条件を緩和して、多くの患者が使えるようにしていただきたい」と要望しています。