ITとインターネットという武器を持っているから
ITは産業を一変させました。
いまや日本経済は、ITとインターネットなしには動かないでしょう。
またITは労働の省力化を達成しつつ、生産性を向上させることができます。
ITは、働き方改革やワークライフバランスの改善に欠かすことができないツールです。
したがってオンライン診療が日本の医療界で拡大すれば、患者の満足度や治療実績を落とすことなく、医師の負担を減らすことができるのです。
ただ医療界には「そこまでオンライン診療に依存することはできない」という意見も根強く残っています。
それは「オンライン診療で医療の質が格段に向上したというエビデンス(証拠)がない」と考える医師もいるからです。
医師の居場所が関係なくなるから
日本の医師不足の問題の本質は、地域偏在と診療科偏在の2つである、と紹介しました。
まず医師の地域偏在の問題ですが、もしオンライン診療が拡大すれば、“医師の居場所”が関係なくなるので解消できる可能性が高まります。
オンライン診療では、医師が患者のスマホ画面に登場すれば診療ができます。
インターネットに距離は関係ないので、もし法律が許せば技術的には北海道の患者の診療を沖縄の医師が行うこともできます。
ただ、その治療において、来院または医師の訪問が一切不要で、オンライン診療だけで全て完結できる治療内容であればの話ではありますが。
つまり医師が多い地域で、患者数が増えないことに困っているクリニックがあれば、医師が少ない地域の患者を診ればいいのです。これで医師不足の悩みと医師過剰による患者不足の悩みが同時に解決できます。
オンライン診療による診察を行う中で、必要な検査や触診等が必要な場合にのみ、直接来院してもらうか、医師が訪問すればよいのです。
しかし現行の法律では、オンライン診療をする医師は、患者の急変時に30分以内に対面診療で対応できないとならないので、現状は、北海道の患者を沖縄の医師が診ることはできません。
患者の急変時に30分以内に対面診療とあるように、基本的には、近くの者同士でなければならないのです。
また、法律的にこれが可能になった場合でも、お互いが直接会う必要が生じる治療内容であれば、時間や交通費がかかってしまう事も考慮しないとなりませんが、オンライン診療のみで治療が成立するような場合には、場所は問わなくなるのです。
専門医にすぐにつなぐことができるから
もし、オンライン診療が拡充すれば、特定の診療科の医師が少ない問題の解消につながるかもしれません。
医師と医師をつなぐオンライン診療もあるからです。
例えば高齢者が「足が痛い」と訴えた場合、足の血管の病気なら循環器内科の領域になりますが、骨や関節に支障をきたしていれば整形外科医が診ることになります。
もし循環器内科医が足の痛みを訴える患者を診たところ、血管や心臓に異常がないことがわかったら、整形外科領域の病気を疑います。
このとき医師対医師のオンライン診療で循環器内科医と整形外科医をつなげば、循環器内科医は整形外科医から診断方法や治療方法などを尋ねることができます。
軽い整形外科の病気であれば、循環器内科医がそのまま治療できるかもしれません。
オンライン診療であればスマホの動画撮影機能を使えるので、インターネットの向こうにいる整形外科医は、患者の動きをリアルタイムで診ることができます。
医師対医師のオンライン診療を使えば、このように“専門医のリリーフ登板”が可能になるかもしれないのです。
そうなればひとりの専門医が、多くの医師に専門的な知識を提供することができます。
医師対医師のオンライン診療は「遠隔画像診断」や「遠隔病理診断」という形ですでに稼働していますが、全体を見てみると、まだまだ普及しているというレベルではないようです。
普及するにはさらなる法律の整備が必要になります。