Telemedicine Report
記事リリース日:2018年12月17日 / 最終更新日:2019年1月21日
オンライン診療(遠隔診療)は2018年4月に、医療保険が使える範囲が格段に広がりました。
オンライン診療を受診できる医療機関は、読売新聞の2018年5月の報道によると1,700医療機関まで拡大しました。
しかしその一方で、「オンライン診療は使いづらい」という医師や患者もいます。
なかにはオンライン診療を取りやめてしまったクリニックもあります。
それは、オンライン診療を使えるケースが糖尿病や高血圧症などの慢性疾患や症例数が多くない難病などに限られているからです。
また、例外を除き、原則として初診は対面診療に限定され、初診から6カ月を経過しないとオンライン診療を受けられません。
6カ月という期間は非常に大きな縛りとなってしまっています。
便利な仕組みがルールによって不便になってしまっている、ともとれますが、厚生労働省としては「これまでになかった医療」であるオンライン診療を急拡大させるリスクを考慮して、慎重にルールを決めているのでしょう。
しかし日本人の寿命は年々延びていて、とうとう『人生100年時代』という言葉まで生まれました。
長寿社会は世界に誇れることですが、いろいろなひずみも生みます。
オンライン診療は、そのひずみを直すポテンシャル(潜在能力)があります。
目次
厚生労働省によると、2007年に日本で生まれた子供の半数は107歳まで生きるであろうという推計があるそうです。
安易な長寿社会が本当に良い事かどうかは、人によっても意見が分かれるところかと思いますが、ここではその点については割愛します。
歴史的な側面で見た場合の不老不死というのは、クレオパトラや楊貴妃の時代から人類のテーマであり、日本はその夢の世界に最も近づいているとされる国なのです。
しかし人生100年時代は、ひずみとの闘いの時代になるでしょう。
企業などの定年退職の年齢は原則65歳で、この年齢で現役を引退したら老後が35年も続くことになります。
その間の生活をどうしたらいいのか、誰が支えるのか、という問題が起きます。
そしてほとんどの病気の発症要因に、加齢が加わっています。年を取れば取るほど病気にかかりやすくなるのです。
がん、心筋梗塞、脳梗塞などは深刻な病気ですが、これらはいずれも高齢者のほうが若年者より多く発症しています。
つまり100年人生の後半は、病気との闘いの人生でもあるわけです。
病気との闘いとは、病気を発症した高齢者の闘いでもありますが、医療費を負担している現役世代の闘いでもあるのです。
医療費の増加を招くのは、高齢化だけではありません。
実は医療の進歩も医療費を増やし、現役世代の負担を大きくしてしまうのです。
新型がん治療薬「オプジーボ」は、これまでの抗がん剤が効かなかった患者に効果を発揮しています。
オプジーボの基礎になっている研究を行った本庶佑・京都大学特別教授は、2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
まさに医学の進歩の「勝利」といえるでしょう。
しかしオプジーボは当初、1年間使うと3,500万円の医療費がかかりました。
それは100ミリグラム73万円もしたからです。
その値段の高さが批判され、オプジーボの製薬メーカーは2017年2月に36万円に値下げし、さらに2018年4月から28万円にしました。
それでも100グラム28万円もするのです。
金100グラムが大体50万円なので、オプジーボは金並みに高い薬なのです。
新薬の価格がどれだけ高くなっても、治療効果が高いのであればその新薬は普及されるべきでしょう。
また医療ロボットや医療AIも研究開発や医療機関への導入に多額の費用がかかりますが、高い効果が期待できるので、やはり普及が望まれます。
高額な新しい医療を普及させるには、医療の仕組みを改善してコストダウンを図るしかありません。
例えば家庭でも、新しい自動車を買う場合、家族は節約を推進するはずです。
オンライン診療は、医療のコストダウンに貢献すると考えられています。
オンライン診療(遠隔診療)を使うには、クリニック側は通信機器やパソコンやインターネット環境などを用意しなければなりません。
患者側はスマートフォン端末を用意しなければなりません。
そのため、オンライン診療をスタートするには、それなりにコストがかかります。
しかしそれ以外は、オンライン診療には“コストダウン要素”がたくさんあるのです。
オンライン診療が普及すれば、患者がクリニックに訪れる回数が減るので、広い待合室を確保する必要がなくなり、クリニックの建設費を減らすことができます。
またオンライン診療は原則クレジットカード払いなので、クリニックの事務員の会計業務が激減します。
これは人件費の抑制につながります。
またオンライン診療で行った診療内容はデータ化できるので、電子カルテが進化すればそのデータをそのまま電子カルテに入力できるようになります。
入力や転記の手間が省けるので、医師の作業軽減になります。
患者はクリニックに出向かなくていいので、移動時間や費用などのコストがかかりません。
そしてオンライン診療の最も大きなコストダウンは、大きな病気の予防につながることです。
大きな病気の治療には時間もお金もかかるので、医療費を減らすには、小さな病気を大きな病気に進展させない予防が重要です。
オンライン診療だと患者は気軽に受けることができるので、受診機会が増えます。
患者はしっかり医師の話を聞くようになり、しっかり薬を飲むようになるので、病気が進行しにくくなります。
オンライン診療の効果は医療費削減だけにとどまりません。
オンライン診療は、高齢者がIT機器に慣れる重要な機会になるのです。
いまや“世の中のすべての情報が入っている”とさえいわれるインターネットに慣れ親しめば、人生が豊かになります。
動画などの娯楽をはじめ、ニュースの入手や読書、買い物、他人とのコミュニケーションもインターネットがあれば出来てしまいますが、その為にはパソコンやスマホやタブレットなどのIT機器を、最低限、自分にとって必要な部分だけでも使いこなせなければなりません。
高齢者の健康を管理するための、血圧や心拍数などを自動計測・記録するウェアラブル端末もIT機器です。
高齢者がオンライン診療を通じてIT機器の使い方を覚えれば、老後の楽しみも健康も格段に向上するというわけです。
しかし、中にはどうしてもIT機器に馴染めず、一人では使いこなせないという場合もありますので、そのような場合でのオンライン診療の受診時には、家族やヘルパーなどのサポートが必要になってくるでしょう。
オンライン診療で医療機関の経営を安定させようという動きもあります。
オンライン診療システムを開発している株式会社アルファーは、オンライン診療を含む医療ITを活用することで、患者の快適性を確保しながら、病院やクリニックの労働効率化や収益改善が図れる、と強調しています。
ITを使えば、医療機関は患者の情報をいち早く入手することができます。
またクリニックと病院間の連携を強めることができ、患者に必要な医療を過不足なく、かつ無駄なく提供することができるようになります。
つまり医療機関は、無駄な医療を削りながら収益を上げることができるようになるのです。
オンライン診療に慎重な意見を持っている医師や医療関係者であっても、ITを使った医療の可能性を否定していません。
そのような人たちは、対面診療が激減することを懸念したり、現状のオンライン診療技術やオンライン診療体制に不安を感じたりしているだけなのです。
つまり、このことを裏返せば、オンライン診療がさらに進化すれば、一気に拡大する可能性があるということです。
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