記事リリース日:2019年1月17日 / 最終更新日:2019年1月21日
医療保険を使ったオンライン診療は
“使いやすく”なるのか
2018年4月1日は、日本のオンライン診療(遠隔診療)の歴史上、よい記念日でもありますが、よくない記念日としても記録されるでしょう。
よい記念日になるのは、このときからオンライン診療が本格的に公的医療保険の対象になったからです。
オンライン診療を受けた患者は、健康保険などの公的医療保険を使えば3割以下の負担で済みます。
また、オンライン診療が診療報酬の対象となりました。
これは患者にも医師にも医療機関にも喜ばしい変化といえます。
しかしこのとき導入されたのは、かなり窮屈なルールでした。
「オンライン診療がやりにくくなった」という医師もいるほどです。
そのため2018年4月1日は、オンライン診療が後退した日という事でもあるのです。
しかし2018年11月に、オンライン診療が使いやすくなるかもしれないと期待させるニュースが飛び込んできました。
政府と厚生労働省が2019年夏にオンライン診療のルールを緩和するというのです。
オンライン診療の現状と少し先の将来についてみていきましょう。
2018年4月に公的医療保険の対象となり使いにくくなった
現行のオンライン診療(遠隔診療)の使いにくさについては、
こちらの記事【2018年版 動き出すオンライン診療2】かなり窮屈なルール?
で詳しく解説していますが、ここでもわかりやすく要点だけをまとめてみます。
現行制度の最大の問題点は、一部の例外を除いては、すぐにオンライン診療を開始することができないことです。
すなわち、患者がオンライン診療を行っているクリニックに電話をして、「オンライン診療を始めてほしい」と依頼しても、最初からオンライン診療を行うことができないのです。
オンライン診療を始める前に、例外を除き、原則として対面診療で初診を受けなければなりません。
対面診療とは、患者がクリニックに出向いて診察室に入って医師の前に座る、従来どおりの診察方法です。
では、初診だけ対面診療を受ければ2回目からオンライン診療を開始できるかというと、それでもできません。
初診から6カ月を経過しないとオンライン診療を受けられないのです。
そして6カ月間対面診療を受ければオンライン診療を開始できるのですが、まだハードルがあります。
初診から6カ月間対面診療をした医師がオンライン診療をしなければならないのです。
すなわち「対面診療はA医師、オンライン診療はB医師」という分業が許されていないのです。
窮屈なルールはまだあります。
オンライン診療がスタートしても、連続した2カ月間でしかオンライン診療を継続できません。
例えば、ある脂質異常症の患者が、内科クリニックを2カ月に1回受診してメバロチンという薬の2カ月分の処方せんをもらう治療を受けていたとします。
受診しても血圧や体重を測ったり医師から最近の状況を聞かれたりするだけです。
この治療をオンライン診療に切り替えても、オンライン診療の次は対面診療を受けなければなりません。
1回のオンライン診療で2カ月分の処方せんをもらうので、次の受診までに2カ月が経過してしまうからです。
オンライン診療の次もオンライン診療を受けてしまうと、2カ月連続しかオンライン診療を継続できないルールに反してしまうのです。
こうした窮屈さからクリニックのなかには、オンライン診療が本格的にスタートした2018年4月1日以降にオンライン診療の患者が減ったところもあるくらいです。
そこで政府がオンライン診療の推進の為に動き始めました。
政府はオンライン診療を拡大する意向
政府は2018年11月に、オンライン診療の推進を全世代型社会保障改革に盛り込むことを明言しました。
全世代型社会保障改革とは、2018年10月に新内閣が発足したときの重要方針で、「65歳以上の継続雇用の義務付け」「年金受給開始年齢の引き上げ」「ITを活用した健康年齢の上昇」などが盛り込まれています。
すなわちオンライン診療の推進は、こうした重要方針と同格の扱いを受けるわけです。
さらに政府は、オンライン診療の実施方法を2019年夏までに見直すと、期間目標を定めました。
注目したいのは、この方針が、政府の経済財政諮問会議や未来投資会議などの場で決められたことです。
経済財政諮問会議も未来投資会議も、経済政策を検討する場です。
そこにオンライン診療の前進が盛り込まれるのは、医療と社会保障の問題が日本経済に大きな影響を及ぼしているからです。
2018年4月にスタートしたばかりの新・オンライン診療制度について、わずか約半年後の10月に、政府が「見直し」を表明するのは異例です。
そもそも、オンライン診療の始め方に問題があったと指摘する声もあります。
オンライン診療については、一部の医師たちによる慎重姿勢が根強くありました。
一方で診療報酬を支払う側は積極的にオンライン診療を推進してほしいを考えていました。
両者の議論は熾烈な論戦となり、結局は本末転倒な「使いにくいオンライン診療」「窮屈なオンライン診療」が2018年4月に誕生してしまったのです。
政府は、医療の質を維持しつつ医療費の膨張を抑制できるオンライン診療を拡充したいと考え、今回の見直しに取り組んだわけです。
厚生労働省の官僚は「必ず進める」と断言
厚生労働省はオンライン診療の推進派と慎重派の間に立たされる立場でしたが、同省医政局の官僚が2018年11月に、九州大学で開かれた日本遠隔医療学会学術大会に出席し、「オンライン診療は必ず進めていかなければならない」と述べました。
かなり踏み込んだ発言であると同時に、時期的にも政府の動きに連動しているともいえます。
この官僚はさらに、オンライン診療は、
- ・少子高齢化
- ・慢性期医療と在宅医療の爆発的な需要増
- ・医師の偏在化
- ・医療従事者の働き方改革
などの解決策になる、との見解を示しました。
そしてオンライン診療推進の具体策としては、遠隔服薬指導を挙げました。
厚生労働省はいま、遠隔服薬指導の導入に向け、法律づくりの準備に取りかかっているそうです。
遠隔服薬指導は、薬剤師によるオンライン診療というイメージで、薬剤師と患者がオンライン(インターネット)でつながり、薬剤師が患者に薬の飲み方の指導や薬の情報を提供する仕組みです。
現行の医薬品医療機器等法では、服薬指導は対面が義務付けられていますが、福岡市などの国家戦略特区では、非対面型の遠隔服薬指導が始まっています。
官僚の発言からは、遠隔服薬指導が全国で実施される日はそう遠くないことがうかがえます。
その一方で監督官庁の厚生労働省らしく、医療の質や安全の確保については、オンライン診療を行っているクリニックに対し「必要な指導は強化していく」とも述べました。
官僚のこうした発言から、厚生労働省はオンライン診療への規制を緩めると同時に監視には力を入れる姿勢であることがわかります。
まとめ~今度こそ拡大・普及するか
オンライン診療(遠隔診療)は、その有益性を認めた医師や民間企業が独自にシステムや手法を開発し、“電話による再診の進化バージョン”や“自由診療”としてスタートしました。
これをオンライン診療の第1期とすると、2018年4月の公的医療保険制度に正式に組み込まれたことは第2期といえます。
第1期で盛り上がりはじめてはいたものの、第2期でややしぼんだ形になってしまいました。
そのため、政府が約束している2019年夏は、再びオンライン診療が盛り上がり、拡大と普及が進む第3期になることを期待したいものです。
当クリニックのED・AGA・肥満治療はオンライン診療が可能です。
料金設定も「予約料500円+お薬の送料一律500円+お薬代」のみとなっております。
厚生労働省の告知に基づき、当クリニックでの初診は来院で受診して頂いた上で、
再診時よりオンライン診療による受診が可能となります。
新橋ファーストクリニック診療科目