記事リリース日:2019年1月25日 / 最終更新日:2019年1月25日
「オンライン診療(遠隔診療)は普及したほうがよい」
多くの人がそう考えています。
それはオンライン診療がITやインターネットを使った未来志向の医療だからです。
政府や経済産業省も推進の立場を取っています。
しかし新しい医療のため、取り組みに消極的な医師が少なくないうえに、「肝心かなめ」の厚生労働省が慎重姿勢を崩さず、普及は進んでいません。
そのような状況にあって“現場のお医者さん”である臨床医が、オンライン診療の普及に動き始めました。
2018年4月には「オンライン診療研究会」といった団体が発足しました。
現場の医師たちが「研究会」を立ち上げた
オンライン診療研究会は、オンライン診療(遠隔診療)を自身の医療現場に取り入れている医師たち11人が立ち上げました。
研究会の目的は、医師たちがオンライン診療について学ぶ場をつくることと、オンライン診療の適切な普及、そしてオンライン診療に関する情報を国民に発信していくことです。
研究会の会長、黒木春郎医師(千葉県の外房こどもクリニック院長)たちには、ある危機感がありました。
オンライン診療は2010年代前半ごろから医療現場に姿を見せはじめるようになりましたが、厚生労働省や日本医師会などに慎重論が根強かったため、なかなか公的医療保険制度の対象になりませんでした。
しかしオンライン診療の利便性は「一目瞭然」であり、また膨張し続ける医療費を抑制する効果が期待できることから、政府や経済産業省などが推進の立場を打ち出しました。
その結果、2018年4月に本格的に公的医療保険制度の対象になりました。
つまり日本の医療制度のなかに、オンライン診療が正式に組み込まれたわけです。
ところが新制度の実態としては、最もオンライン診療を必要としている病気の治療への適用が除外されたり、初診からオンライン診療を実施することが原則できなくなったりと、実質的に規制が強化されたのです。
例えば、皮膚科や精神科の病気をオンライン診療で診ることは、医療保険の対象外です。またオンライン診療の対象となる生活習慣病や難病の治療であっても、初診は必ず対面診療でなければなりませんし、さらに少なくとも対面診療を半年以上続けなければオンライン診療に移行できません。
オンライン診療研究会の黒木会長は講演会で「オンライン診療の本来の理念に沿わない制約が設けられた」と述べています。
しかしこの研究会は、現行制度や厚生労働省を批判しているわけではありません。
そうではなく、研究会の医師たちが中心となってオンライン診療を受けた患者の体験を世の中に伝えることで、その利便性が理解され、その結果、オンライン診療の対象疾患が増えたり制約が減ったりする、と考えています。
研究会のこの動きはオンライン診療業界でも重く受け止められていて、オンライン診療のシステムを開発・販売している株式会社メドレー(本社・東京都港区)の代表取締役医師の豊田剛一郎氏は「臨床現場の医師たちから声をあげてもらわなければ大きな動きにはならない。オンライン診療に取り組む現場の医師をどれだけつくれるかが大切」と述べています。
つまりオンライン診療を拡大させるには、まずは医師が「便利で効果的な医療だ」と認識し、自らの医療現場で導入することが欠かせないわけです。
オンライン診療研究会の目的
オンライン診療研究会を支援する動きは確実に広がっていて、例えば公益社団法人日本小児科学会はそのホームページで、同研究会の開催を告知しています(※1)。
※1 オンライン診療研究会の開催を告知する、日本小児科学会のホームページ
そして、ここで告知されている「第1回公開オンライン診療研究会~オンライン診療の現在、臨床現場からの提言」には、日本医師会と東京都医師会が後援しています。
いうまでもないことですが、日本小児科学会も日本医師会も東京都医師会も日本の医療にとって重要な団体ですし、日本医師会にいたっては会員の医師のなかにはオンライン診療に消極的な人もいます。
それでもこのように研究会をサポートしているのです。
先ほどオンライン診療研究会の目的は、
- ・オンライン診療に携わる医師たちの学びの場
- ・オンライン診療の適切な普及
- ・オンライン診療の情報発信
であると紹介しました。
これら以外にも、この研究会では、「オンライン診療による地域医療ネットワークの構築」や「オンライン診療でのお看取り」、「医療とIT・AI(人工知能)との融合」なども検討していきます。
いずれも日本の医療にとって重要な課題といえます。
例えば地域医療ネットワークは、厚生労働省の最も重要な医療政策のひとつである地域包括ケアシステム(※2)に関わる事項です。
地域包括ケアシステムとは、団塊の世代が75歳以上になる2025年をめどに、重度な要介護状態になっても住み慣れた地域で人生の最後を迎えられる社会をつくる取り組みです。そのために、医療と介護と予防と生活支援を一体的に(包括的に)運営していきます。
医療と介護と予防と生活支援は、それぞれ行為者も制度も異なります。
それでは地域包括ケアシステムが稼働しないので、それらを連携させる必要があります。
だから地域医療ネットワークという“つながり”が欠かせないわけです。
ただ、この“つながり”は、“言うは易く行うは難し”です。
そこで、オンライン診療が活用できるかもしれないのです。
オンライン診療はそもそも、医師と患者をインターネットとスマホとパソコンで“つなぐ”医療です。
そしてオンライン診療の仕組みを使えば、介護と医療の“つながり”を構築することもできるでしょう。
会長のクリニックのホームページがわかりやすい
オンライン診療研究会の会長、黒木春郎医師が院長を務める外房こどもクリニック(千葉県)のホームページのオンライン診療の解説ページはとてもわかりやすく、オンライン診療を知らない患者にとってとても参考になると思います。
会長自らがオンライン診療の情報発信をしているのです。
例えばこのホームページでは「オンライン診療」という言葉を使わずに「オンライン通院」という言葉を使っています。
「診療」は医師目線の言葉ですが、「通院」は患者目線です。
また「オンライン通院」という言葉には「いつもの通院をオンラインで済ませることができるんですよ」というニュアンスが含まれています。
そして黒木医師は、オンライン通院を次のように説明しています。
「移動時間も待ち時間もゼロ」「パソコンやスマホでどこでも受診可能」「処方せんが自宅に届く」
患者のメリットを端的に表現しています。
簡潔で、とても理解しやすいといえます。
さらにオンライン通院が適している患者として、
- ・外房こどもクリニックに定期的に通院中で、問診と視診のみで診療可能な方
- ・遠方から通院している方
- ・基礎疾患を持っていて通院困難の方
を挙げています。
オンライン診療の普及には“まずは知ってもらう”ことが欠かせません。
現場の医師がこうした丁寧な説明を積み重ねていくことは、とても重要です。
まとめ~オンライン診療の良さを埋もれさせたくない
新しい医療はいつも進歩的な医師たちによってもたらされます。
新しい医療のなかには、本当は優れた内容であるにもかかわらず、なかなかそのよさが理解されないものもあります。
そのようなタイプの新しい医療を普及させようとしている医師は、さまざまな壁を乗り越えていかなければなりません。
オンライン診療(遠隔診療)も、本当は優れた内容であるにもかかわらず、普及が進んでいない医療といえるでしょう。
オンライン診療研究会の今後の動きには注目したいところです。
当クリニックのED・AGA・肥満治療はオンライン診療が可能です。
料金設定も「予約料500円+お薬の送料一律500円+お薬代」のみとなっております。
厚生労働省の告知に基づき、当クリニックでの初診は来院で受診して頂いた上で、
再診時よりオンライン診療による受診が可能となります。
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