記事リリース日:2019年2月14日 / 最終更新日:2019年2月15日
精神科領域でオンライン診療の
医師向け「手引書」が完成
オンライン診療(遠隔診療)を行っているクリニックの医師にとって、待ち望んでいたものがようやく完成しました。
国内初の、オンライン診療を行っている医師向け「手引書」が、慶応義塾大学医学部などによって作成されたのです。
「精神科領域における遠隔(オンライン)診療のための手引書」(※)というタイトル通り、精神科領域向けにつくられているのですが、多くの部分で他科のオンライン診療にも参考になるはずです。
手引書がつくられた背景と、手引書の詳しい内容を紹介します。
なぜ医師向けの「手引書」が必要なのか
オンライン診療は、2018年4月に本格的に公的医療保険制度に導入されたばかりの新しい医療です。
そしてスマホやパソコン、インターネットなどを使うので、医師や医療機関にはITやWebの知識が求められます。
したがってオンライン診療を行っている医師のなかには、手探り状態の人も少なくないはずです。
もちろんこれまでも、オンライン診療の医師をサポートする態勢は存在しました。
例えば、オンライン診療のシステムを開発・販売している企業は、自社が蓄積したノウハウを医師たちに提供しています。
さらに厚生労働省は「オンライン診療の適切な実施に関す指針」を作成し、これも多くの医師が参考にしているはずです。
ではなぜ、今回つくられた「精神科領域における遠隔(オンライン)診療のための手引書」が注目されているのでしょうか。
それは、医師が作成した医師向けの手引書だからです。
オンライン診療に限らず、あらゆる医療領域に、指針(ガイドライン)や手引書が存在します。
このようなものが存在するのは、医療の質を均一にする必要があるからです。
日本の公的医療制度は、全国どこでも同じ医療を受けることができることが前提になっています。
そのため医療費は全国一律です。
医療機関の設備の充実度や医師のスキルの質にかかわらず、同じ医療行為(治療)には同じ料金が課されているのです。
指針(ガイドライン)や手引書といった、書かれたものは、同じ行動を取るには便利です。
もちろん現場の医師たちは指針(ガイドライン)や手引書に書かれてあることだけをしているのではなく、それ以上のことを行っています。
しかし指針(ガイドライン)や手引書があれば、最低限の水準をクリアすることができます。
また、ビジネスパーソンではなく、医師だからこそ指針(ガイドライン)や手引書が必要になる事情もあります。
会社勤めのビジネスパーソンは、自身が社長になるまでずっと上司がつきますし、営業担当者であれば総務部門や経理部門や販売部門がフォローしてくれます。
しかし医師は、一定期間がすぎると患者集めから治療、アフターフォローまで、1人でこなさなければなりません。
特に外科医は、執刀医として手術室に入ったら、1人で重要な決断をしなければならないこともあります。
しかも医療は日々新しい医療が生まれていますが、それをフォローするのも、医師の場合、自分だけで行わなければなりません。
医師たちが「学会」という研究組織をつくり、ほとんどの医師がいずれかの学会に所属しているのは、自ら研鑽することが常に求められているからです。
そして多くの学会は、自分たちの専門領域の病気について、治療指針(ガイドライン)を作成しています。その指針は定期的に更新され、最新医療を盛り込みます。
「精神科領域における遠隔(オンライン)診療のための手引書」は、学会ではなく、「遠隔神経科医療手引書策定タスクフォース」というチームが作成しています。
しかし、特殊な医療を行っている医師のために「治療の仕方」を紹介している点は、学会による治療指針と同じです。
精神科領域における遠隔(オンライン)診療のための手引書をつくった狙い
「精神科領域における遠隔(オンライン)診療のための手引書」を作成した、遠隔神経科医療手引書策定タスクフォースは、慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室の岸本泰士郎・専任講師(医師)をリーダー(総括)とするチームです。
手引書は、日本医療研究開発機構(AMED)の委託事業の一環で作成されました。
慶應義塾大学医学部はこの手引書を作成した狙いについて、以下の3点を挙げています。
- ・精神科領域でのオンライン診療を安全に高い質を保ちながら行うため
- ・オンライン診療を法令に則(のっと)り正しく行うため
- ・オンライン診療に関連する法令やガイドラインは膨大かつ難解で、医師が理解するのに困難だったため
この手引書の作成にあたっては、アメリカ遠隔医療学会(ATA)の協力をあおいだといいます。また遠隔神経科医療手引書策定タスクフォースには医師のほか、法律家やIT技術者も参加しています。
「精神科領域における遠隔(オンライン)診療のための手引書」の概要
「精神科領域における遠隔(オンライン)診療のための手引書」は「精神科」とついていますが、システムや法律関係などの内容は、内科や小児科など他科の医師にも参考になります。
手引書は全56ページで、「第1章 臨床におけるポイント」「第2章 法令におけるポイント」「第3章 技術におけるポイント」の3部構成になっています。
それぞれの概略を紹介します。
第1章 臨床におけるポイント
第1章 臨床におけるポイントでは、オンライン診療の始め方と進め方の方法が具体的に示されています。
電子カルテなどの医療情報システムとオンライン診療のシステムが接続されているケースと、接続されていないケースの両方を想定し、ハードの構築やセキュリティ対策のあり方などについて紹介しています。
そして、ある患者がオンライン診療に適しているかどうかの判断は、次の3点をチェックするようアドバイスしています。
- ・オンライン診療が患者の治療にとって有益なものになりうる
- ・安全性の確保について、患者の継続的な協力が得られる
- ・オンライン診療を受けるための環境が整っている
オンライン診療を開始するときは、次の9項目を含む診療計画を立てます。
- ・オンライン診療で行う具体的な内容(疾患名や治療内容など)
- ・オンライン診療と対面診療と検査の頻度やタイミング
- ・診療時間
- ・オンライン診療の方法(使用する情報通信機器など)
- ・オンライン診療を行わないと判断するときの条件や対面診療に切り替えるときの条件
- ・患者がオンライン診療に対して積極的に協力する必要がある旨
- ・急病、急変時の対応方針
- ・複数の医師がオンライン診療を実施する場合のそれぞれの医師の氏名と担当する診療の内容
- ・セキュリティリスクの責任の明示
この章にはそのほかに、テレビ電話システムやビデオカンファレンスシステムを使う上での注意点や、他の医師との連携の方法、緊急時の対処法、非協力的な患者への対応、処方の仕方なども記載されています。
第2章 法令におけるポイント
第2章 法令におけるポイントには、「まったく対面診療をせず、テキスト情報などだけで完結させるオンライン診療は違法」と明言されています。
そのほか、患者とその家族への説明や診療体制の整備が必要であることや、プライバシー保護に慎重に配慮すること、個人情報保護法の遵守、厚生労働省が作成した「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取り扱いのためのガイダンス」(※)に従う必要があることなどが記されています。
医療法の観点からは、次の内容が指摘されています。
- ・盛り場などで医師がオンライン診療を行うことは許されない
- ・騒音によって音声が聞き取れない環境や、ネットワークが不安定で動画が途切れる場所でオンライン診療を行うことは適さない
- ・患者の居場所は「居宅等」でなければならない
- ・「居宅等」には自宅のほか、療養生活を営む場所や職場、リハビリをしながら働く場所が含まれる
- ・公民館や地方包括センターなどは「居宅等」に含まれないが、保健所に巡回診察届を提出した公民館や地域包括センターは含まれる
オンライン診療で医療事故が起きた場合は、医師が負うものと明記されています。
通信機器の不具合による事故の責任も、システムを提供している企業ではなく、医師や医療機関が負うべきとしています。
処方せんと薬の取り扱いについては、「2018年8月現在、オンライン診療に特化した特別な規制は存在しない」として、オンラインでの処方は医師の判断により可能である、と判断しています。
処方せんの写しを電子メールで薬局に送信することは認められています。
ただ患者には、処方せんの原本を郵送するよう指摘しています。
院内処方の医薬品を患者の自宅に宅配することは、一部の毒劇物を除き、規制されていない(宅配してよい)としています。
薬剤師による患者への説明については、薬機法によって対面が義務づけられているので、オンライン診療システムを使うことはできません。
この第2章ではそのほかに、診療報酬について詳しく書かれてあります。
第3章 技術におけるポイント
「第3章 技術におけるポイント」では、遠隔精神科医療に関する、
について解説しています。
そのほか、
- ・ネットワーク環境の構築方法
- ・ビデオカンファレンスのソフトとアプリの外部委託契約の締結時の注意点
- ・関連機器の管理・保管方法
- ・ビデオカンファレンスシステムの運用責任者
などについても詳述しています。
まとめ~模索しながら前進
オンライン診療はすでに医療現場に投入されています。
しかしオンライン診療は当初、厚生労働省や一部の医師から否定的にみられていました。使用を制限する動きが根強かったのですが、その利便性を訴える医師とシステム企業の尽力によって本格導入に至った経緯があります。
そのため、オンライン診療に積極的に取り組み医師たちは、オンライン診療の「真価」を世間に示さなければなりません。
そういった意味で、オンライン診療は模索しながら前進している状態です。
したがって慶應義塾大学医学部という日本の医療界で重要な位置を占めている機関がリードして「オンライン診療手引書」を作成したことは、重要な意味があります。
当クリニックのED・AGA・肥満治療はオンライン診療が可能です。
料金設定も「予約料500円+お薬の送料一律500円+お薬代」のみとなっております。
厚生労働省の告知に基づき、当クリニックでの初診は来院で受診して頂いた上で、
再診時よりオンライン診療による受診が可能となります。
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