Telemedicine Report
記事リリース日:2017年10月11日 / 最終更新日:2019年1月18日
医療機関で診察してもらうには時に患者がまず行わなければならないのは、保険証の提示です。
ところがオンライン診療(遠隔診療)では、患者は医療機関に出向きません。
では、オンライン診療を行っている医療機関は、どのように保険証を確認したらいいのでしょうか。
目次
オンライン診療(遠隔診療)を行っている医療機関で最も多い保険証の提示方法は、これまで通り患者が保険証を持参して医療機関の窓口に提示する方法です。
というのも、ほとんどのオンライン診療を行っている病院・クリニックの初診は直接の対面方式での診療を原則にしているからです。対面方式の診療とは、患者が医師の前に座って、医師から直接診療を受ける方法です。
オンライン診療を行う場合でも初診だけは直接対面方式にしているのは、厚生労働省がその方が望ましいと考えているからです。
また医師の方も、まったく知らない患者を最初からスマホやタブレット越しに診ることに不安を感じることが多く、最初くらいは実際に会って診療したいと考えています。
初診を直接の対面方式で行えば、必ずそのときに保険証の現物を確認できるので医療機関の事務職員たちも安心できます。
基本的にオンライン診療(遠隔診療)の利用は、対面診療の補完として認められたものですが、初診からオンライン診療を行うという例外も徐々に広がりつつあります。
厚生労働省は2017年8月、禁煙外来に限っては初診からオンライン診療を行ってもよいという事務連絡を都道府県に出しました。
患者は1度も医療機関に足を運ぶことなく、スマホやタブレットのやりとりだけで治療を始め、そのまま治療を終わらせることができるのです。
しかし、この初診からオンライン診療が行える禁煙治療を行うには、医療機関と健康保険組合などの保険者が事前に提携していなければなりません。
こうすることで、医療機関側は禁煙治療をオンライン診療で受ける患者の身元が確認できます。
医療機関は常に、患者から提示された保険証が本物かどうかを気にしています。もし偽物の保険証に気付かずそのまま治療してしまったら、医療費の3割はその患者から徴収できますが、残りの7割は回収不能になり医療機関は大損を被ることになるのです。
オンライン診療の身元確認にはスマホなどで撮影した保険証をアプリにアップロードするのがオンライン診療の主流となっております。
当クリニックは自由診療の為保険証は必要ありませんが、オンライン診療(遠隔診療)を行っているとあるクリニックでは、初診は対面の直接診療を行っています。
このクリニックでオンライン診療を受けるには、初診を済ましスマホに専用アプリをインストールする必要があります。
そして診察の前日までに保険証をスマホのカメラで撮影し、このアプリにアップロードしなければならないのですが撮影をしてアップロードするだけの簡単な作業になります。
この作業を済ますことによりクリニック側としては、患者の保険証のコピーを入手したことになります。
このクリニックでも初診は来院しなければならないので、その時点で本物の保険証とアップロードした保険証の写真を照合するわけですが、初診からオンライン診療できる範囲が広がれば、将来的にはこの方法が主流になるのではないでしょうか。
ただそのためには、写真データで送られてきた保険証が患者本人のものであると確実に確認できるシステムの開発が必要になります。
しかしこれも、すでに本人を特定する方法として、指紋認証や顔認証、静脈認証などが実用化されているので、これらの技術を応用すれば不可能ではないでしょう。
最近では日立がパソコンのカメラに顔を向けるだけで、わずか0.1秒でパソコンのロックを解除する顔認証システムを開発しました。
オンライン診療において課題となっている個人情報認証システムについては、日々研究が進められています。
沖縄県で2017年7月、保険証を使った詐欺事件が起きました。
偽の保険証でローン契約を結び200万円以上の貴金属などをだまし取った疑いで、2人の男が沖縄県警に逮捕されました。
容疑者らが作った偽造保険証は15枚で、4つの店舗で荒稼ぎしていたのです。
しかもこの偽造保険証を使って銀行など20の金融機関で新規口座を開設し、預金通帳26通とキャッシュカード12枚を不正入手していたのです。
このように、保険証には強力な社会的な信用力があり、それゆえに患者と直接会うことがない完全オンライン診療(遠隔診療)では、保険証の確認作業が大きな課題になるのです。
日本の医療制度は皆保険といって、国民全員がいずれかの医療保険制度に加入しています。これはとても素晴らしいことで日本が世界に類を見ない長寿国であるのは皆保険制度のおかです。
しかしそのせいで、医療制度が複雑化しています。医療保険がたくさんあり、その数だけ保険証が存在するのです。医療機関はそのすべてを確認しなければなりません。
医療保険の種類 | 概要 |
---|---|
全国健康保険協会(通称、協会けんぽ) | 中小企業など自社で健康保険組合を持たない会社で働く人が加入する |
健康保険組合 | 大企業などは自社で健康保険組合をつくり、公的医療保険制度を運営している |
国民健康保険 | 市町村が運営し自営業やフリーターなどが加入する |
国民健康保険組合 | 国民健康保険の一種だが、医師、薬剤師、建設業、土木業など特定の業界が組合を結成し運営している |
共済組合 | 公務員や私立学校教師が加入する |
船員保険 | 運営するのは協会けんぽだが、加入できるのは船舶に乗り込む船長や船員 |
後期高齢者医療制度 | 原則75歳以上の人が加入する |
任意継続被保険者 | 会社を退職すると、協会健保や健康保険組合から脱退しなければならないが、特別な手続きをすれば退職後も一定期間、加入を継続できる |
つまり医療機関は、治療費の7割の金額をこうした制度を運営する組織から徴収しなければならないのです。
そしてこの患者はこの医療保険に加入していますという証明は、保険証だけが頼りなのです。
医師たちが「初診は直接の対面診療をしたい」と考える第一の理由は効果的な治療を行うためなのですが、治療費を確実に徴収したいという気持ちもあるのです。
従来型の直接の対面方式での診療でも、保険証を貸し借りした詐欺行為が横行しています。慎重な医療機関では、初診時は保険証だけではなく運転免許証や住民票などの提示を求めます。
インターネットをフル活用するオンライン診療(遠隔診療)では、常にネットのリスクと向き合わなければなりません。保険証の確認問題は、その1つといえるでしょう。
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