記事リリース日:2019年4月24日 / 最終更新日:2019年4月24日
AI(人工知能)が医療現場に進出しています。
AIといえば、囲碁の世界トッププロを破ったり天気予報の精度を上げたりと、人知を超える活躍をみせていますが、医療では人の命を救うことに貢献しています。
NECと新潟大学医歯学総合病院が、AIを使って手術後の患者の感染症の発症を予測するシステムを開発しました。
感染症は、手術を受けた患者を再び苦しめる「残酷な病気」です。
事前に感染症の発症リスクがわかれば手術の前後の管理を徹底することができ、感染症リスクを減らすことができます。
手術後感染症とは
AI手術後感染症予測システムを紹介する前に手術後感染症についてみていきましょう。
この「恐さ」を知れば、AIで手術後感染症を予防することの意義を実感できるでしょう。
そもそも感染症とは、細菌やウイルスによって引き起こされる症状や病気の総称です。
発熱や痛み、膿を引き起こしたり、肺炎を発症したりすることもあります。
例えば、胃がん治療で手術を受けた患者が、感染によって肺炎を引き起こして死亡したとします。
胃がんで死亡したわけではないので、遺族としては「手術をしなければこのタイミングで亡くなることはなかった」と考えるかもしれません。
もちろん、胃がん治療では手術が避けられないことが多いですし、病院側がどれだけ感染症に注意していても避けられないことはあります。
したがって手術後感染症は、医療ミスや医療事故で起きるだけでなく、治療のリスクとして考えなければならない部分もあるのです。
耐性菌の存在
手術後感染症の予防としては、抗生物質という薬が有効であるとされています。
抗生物質は細菌を叩くことができます。
ところが、抗生物質を使い続けていると、抗生物質の効果が落ちることがあります。
細菌は増殖することで健康被害を拡大させるのですが、抗生物質がその増殖を抑えられなくなるのです。
これは細菌に耐性ができるからです。
つまり抗生物質にさらされ続けた細菌が「パワーアップ」して、抗生物質の攻撃に耐えられるようになるのです。
抗生物質への耐性を持った細菌のことを耐性菌といいます。
耐性菌に打ち克つ新たな抗生物質を開発しても、その抗生物質に耐えられる新たな耐性菌が発生します。
「医師や病院のせい」とは一概にいえない
医療従事者ではない一般の人が「手術後に感染症を発症した」と聞くと、「医師や病院の管理がなっていないからだ」と感じるかもしれません。
これは「感染してしまう」=「予防していない」というイメージがあるからです。
しかし感染症を引き起こす細菌は、人の体のなかにも存在します。
つまり、患者が保有していた細菌が手術を受けた部位に侵入し感染症を引き起こすこともあるのです。
例えば、大腸のなかには細菌だけでなく大便が存在し不潔な状態ですが、そのままであれば人の健康に害を与えることはありません。
しかし大腸の手術をしているときに大腸のなかの細菌や大便が体内に入れば、感染症を引き起こす可能性が高くなります。
ほとんどの病院では、手術室に特殊な空調設備を設置して空気中の細菌を極力減らしています。
また、手術に使う器具は熱、ガス、放射線をつかって無菌状態にしています。
外科医たちが着る手術着も特殊な方法で厳重に滅菌しています。
患者には手術前に抗生物質を投与します。
それでも手術後感染症が起きてしまうのは、細菌が数μm(マイクロメートル)というミクロの大きさだからです。
現代医学では、この大きさの物質を完全に患者から遠ざけることはできないのです。
AI手術後感染症予測システムとは
AI手術後感染症予測システムを開発したのは、NECソリューションイノベータ株式会社と新潟大学の医療情報部と薬剤部です。
まだ検証レベルではありますが、新潟大学医歯学総合病院で消化器科外科手術を受けた患者の手術後感染を予測することに成功しました。
手術後感染症を引き起こす原因は「たくさん」あります。
先ほど紹介した、患者自身が保有する細菌も原因のひとつです。
空気中の細菌も原因になります。
そのほか、手術後に尿を強制的に排出するために、尿道に管を入れ膀胱に到達させることがあるのですが、その管から感染することもあります。これを尿路感染といいます。
AI手術後感染症予測システムでは、約2,000人の患者データをAIに分析させ次の2つを実現しました。
- ・手術後感染症を引き起こしそうな患者を予測する
- ・手術後感染症に関係する原因を特定する
これらがわかれば、手術後感染症を引き起こしそうな患者を重点的に管理することができますし、手術後感染症に関係する原因を取り除くこともできます。
AI手術後感染症予測システムの制度は「AUC85%」を誇ります。
AUC(Area Under the Curve)とは、統計やデータ解析で用いられる指標で、判断や分類の正しさ(精度の高さ)を0%から100%で表します。
100%正しい判断ができたとき「AUC100%」と表記します。
したがってAUC85%を出したAI手術後感染症予測システムの「すごさ」が理解できると思います。
異種混合学習というAI
AI手術後感染症予測システムで使われているのは、NECが独自に開発した異種混合学習というメカニズムです。
従来のAIは、大量のデータから単一の規則をみつけ、その規則性から予測を立てていました。
それに対して異種混合学習タイプのAIは、まずデータのなかから複数の規則を発見します。
続いてデータのパターンを読み解いて、参照すべき規則を自動で選択するのです。
したがって、最適な規則を用いて予測することが可能になります。
さらにNECの異種混合学習であれば「AIがなぜその答えを出したのか」がわかります。
一般的なAIは判断根拠がブラックボックスになっています。
つまり「AIがなぜその答えを出したのか」がわからないのです。
判断根拠がわからないと、AIユーザーは「AIが100回正しい答えを出したとしても、101回目に間違った答えが出るかもしれない」と考えなければなりません。
しかし、判断根拠がわかれば、「それを根拠に正しいと判断しているのであれば、101回目も正しい答えを出すだろう」と考えることができます。
囲碁の勝負であれば、「AIがなぜその一手を指したのか」がわからなくても問題ありません。
しかし、医療現場ではエビデンス(根拠)が重視されます。
医療で「なぜかわからないが、高い確率で正しい答えを出す装置」は危なくて使うことができません。
したがってNECのAIが判断根拠を示すことは、医療現場で使ううえでとても大きな意味を持つのです。
まとめ~「清潔以上の清潔」が求められる現場
人の体は、皮膚の表面と消化管の表面など以外は閉じられています。
それは人の臓器や組織は細菌を含む外の環境に弱いからです。
手術は外界に対して閉じられた人の体のなかを、メスで開く行為です。
したがって手術は無菌状態で行うことが理想とされています。清潔以上の清潔が求められているのです。
ところが現代の医学や科学では、完全な無菌状態を保つことはできません。
仮に外界を完全にシャットアウトできる手術室をつくることができたとしても、患者自身が細菌を保有しそれを手術室に持ち込むので、やはり無菌状態は保たれません。
したがって医療現場では、感染リスクを減らす工夫が重要になってきます。
そこでAIが活躍します。
AIは状況分析と対策の提案が得意なので、まずはAIが気づいたことを実践すれば、感染リスクを減らすことができます。
新潟大学とNECの取り組みが早く実用化されることを期待します。
当クリニックのED・AGA・肥満治療はオンライン診療が可能です。
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