Telemedicine Report
記事リリース日:2019年5月10日 / 最終更新日:2019年5月10日
無料チャットアプリのLINEを運営するLINE株式会社が、オンライン医療に進出しました。
LINEは人々のコミュニケーションを劇的に変えましたが、今度は医療にどのような変革をもたらそうとしているのでしょうか。
LINEはオンライン医療事業を、エムスリー株式会社という会社と一緒に行います。
エムスリーは一般の方にはあまり知られていないかもしれませんが、実はあのソニーの関係会社で、世界中で医療ビジネスを展開している東証一部上場企業です。
目次
LINEとエムスリーは2019年1月、共同でLINEヘルスケア株式会社を設立しました。
オンライン医療事業を行うのはこの会社です。
オンライン医療とは、インターネットやITやパソコンやスマホを使って医療サービスを提供する事業です。
医師がインターネット経由で診療をするオンライン診療(遠隔診療)は、オンライン医療のひとつです。
LINEヘルスケアが行おうとしている事業は次のとおりです。
ただ、これらのサービスのなかにはまだ実施予定のものも含まれています。
ひとつずつサービス内容を紹介します。
医療Q&Aは、患者や一般の方が病気や治療法や薬について知りたいときに、簡単に調べることができるサービスです。
インターネット上にはすでに医療情報が大量に出回っていますが、情報量が多すぎて自分が知りたい情報にたどり着けないこともあります。
また、大学病院や総合病院が公式サイトで提供している情報は、正確かつ最新のものですが専門用語を使っていたり内容が高度すぎたりして一般の人には理解しにくいことがあります。
一方、まとめサイトは平易な文章で書かれていますが「誰が書いたのか」わからないものが多く、信憑性(しんぴょうせい)に欠ける心配もあります。
エムスリーは医療従事者専門サイト「m3.com」を運営していて、約27万人の医師が登録しています。したがって同社には「確かな医療知識」が蓄積されています。
LINEはインターネット企業なので、ユーザーが使いやすいサイトを構築するのが得意です。
したがって両者が力を合わせれば、患者や一般の人が簡単に「正確かつわかりやすい医療情報」を入手できる医療Q&Aを構築できるわけです。
遠隔健康医療相談も医療Q&Aと同じように、患者や一般の人が医療について知りたいときに使うサービスです。
ただ医療Q&Aでは一般的な医療情報を入手することはできますが、個別の相談はできません。
一方、遠隔健康医療相談は「自分や家族の個別の健康の話」を聞くことができます。
遠隔健康医療相談は、患者と医師をインターネットのテレビ会議システムでつなぐので、お互いに相手の顔をみながら話すことができます。
「病院や医療機関にかかるほどのことではないが医者に尋ねたいこと」は、多くの人が抱えています。
遠隔健康医療相談を使えばそのような疑問を解決できるだけでなく、受診したほうがよいのか、それともしばらく経過観察でよいのかもわかります。
オンライン診療はオンライン医療のメーンのサービスになります。
厚生労働省は2018年4月に、オンライン診療を正式に公的医療保険の対象に加えました。
オンライン診療は、患者と医師が離れた場所にいて、両者がインターネットのテレビ会議システムを使うこと以外は、病院やクリニックの外来と同じです。
患者はスマホの画面に現れている医者に向かって症状を訴え、医師はパソコンの画面に映っている患者に質問をしたり医療的なアドバイスをしたり薬の説明をします。
オンライン診療が終ると、患者はクレジットカードで治療費を支払います。
オンライン診療で使うシステムは、遠隔健康医療相談で使うシステムと同じものです。
処方薬の宅配サービスは、オンライン診療で薬を処方するときに使います。
医師が処方せんを発行すると、医師が所属する医療機関がその処方薬を患者宅に宅配便で送ります。
処方薬の宅配サービスまで整備できるようになると「患者が医療機関に行かなくてもよい医療」はかなり充実します。
インターネットを使えば、患者に病院やクリニックでの待ち時間を知らせることができます。
待ち時間が長くなることがわかれば、患者は急いで病院やクリニックに行く必要はありません。
待ち時間解消システムは、医療機関側にもメリットをもたらします。
待ち時間が解消されれば、例えばインフルエンザ患者の滞在時間も短くなるので、院内感染リスクを減らすことにつながるかもしれません。
医療業界で今、ヘルステックという言葉が話題になっています。
健康という意味のヘルスと、技術のテクノロジーを合わせた造語です。
この場合の技術とは、インターネットやIT、IoT、AIなどのことをいいます。
ITは情報技術、IoTはインターネットをすべてのモノにつなげる技術、AIは人工知能のことです。
今回のLINEヘルスケアの取り組みは、まさにヘルステックです。
ヘルステックには、
1)医療サービスの向上
2)医療コストの削減
という2つの目標があります。
現代医療にはエビデンスが求められます。
エビデンスとは根拠や証拠といった意味で、例えば「この薬を使うと〇〇という効果が得られるので□□病の治療が期待でき、実際この薬で治癒した患者が△%いる」と証明できれば、「その薬を使った□□病の治療にはエビデンスがある」ということができます。
しかしエビデンスを集めることは容易ではなく、膨大な量のデータを収集・分析しなければなりません。インターネットやITやIoTやAIなどの技術は、その収集・分析を高度化しながら時間短縮することができます。
したがって、エビデンスを強化できるヘルステックは、医療サービスを向上させることができるのです。
またヘルステックを使うと無駄な作業をしなくて済むので、医療コストを削減できます。
先ほど紹介したように、オンライン医療を使えば病院での待ち時間を減らしたり、患者が通院する手間を省いたりすることができます。
いずれもコスト削減につながります。
またヘルステックを活用して省力化や省人化を進めれば、医療従事者の「過労」を防ぐことができるかもしれません。
LINEヘルスケア株式会社を設立したLINE株式会社とエムスリー株式会社について紹介します。
LINE株式会社は2000年に設立されたネット企業で、本社は東京都新宿区にあります。
単体の従業員1,938人、資本金約961億円の巨大企業で、東証1部だけでなくニューヨーク証券取引所にも上場しています。
LINEの事業は急拡大していて、無料チャットアプリLINEはそのひとつにすぎません。
モバイル送金・決済、ベンチャー企業への投資、仮想通過事業なども手掛けています。
エムスリー株式会社も2000年に設立されました。
本社は東京都港区にあり、資本金は約37億円です。従業員数は単体では364人ですが、連結では5,165人になります。
当初、医療情報サイトを運営していましたが、医療調査サービスや医療系マーケティング、医師向け求人支援などを手掛けるようになりました。
ビジネス領域は日本にとどまらず、韓国、アメリカ、イギリス、フランス、中国、インド、北欧に展開しています。
日本の医療業界は厚生労働省の規制が厳しく、民間企業の参入は簡単ではありませんでした。
そこに「風穴」を開けたのは、オンライン診療です。オンライン診療を行うにはITとインターネットが欠かせないため、IT企業やインターネット企業の知恵が必要になりました。
またIT企業やインターネット企業も、医療業界にビジネスチャンスを見出しています。
医療は人の命と健康に深く関わることなので、ビジネス化は慎重に行わなければなりませんが、しかし優れた企業が医療に参加すればよい知恵が生まれてくるので、医療がよりよくなり、より安くなる可能性があります。
人々の生活を一変させたLINEの医療分野への進出には、大いに期待したいところです。
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