記事リリース日:2019年6月7日 / 最終更新日:2019年6月7日
【基礎からわかるオンライン診療】
公的医療保険は使えるの?
シリーズ「基礎からわかるオンライン診療」では、最近医療現場で使われるようになってきたオンライン診療について、患者さんや一般の方が「いまさら聞けない」と感じている基本的なことを、じっくり解説しています。
今回のテーマは、オンライン診療を受診するとき、健康保険などの公的医療保険は使えるのか、です。
つまり、オンライン診療も一般の医療と同じように「原則3割自己負担」で受診することができるのでしょうか。
答えを先に紹介すると、「オンライン診療は公的医療保険を使うことができます」。
しかし「使いにくい」という問題も残っています。
かつては公的医療保険は使えなかった
公的医療保険とは、病気やけなどをしたときに原則3割の治療費負担で医療が受けられる代わりに、毎月保険料を支払う制度です。
運営しているのは、政府、協会けんぽ、企業の健康保険組合、市町村などで、日本に住んでいる人は全員いずれかの公的医療保険制度に加入しなければなりません。
公的医療保険の対象となる治療は厚生労働省が定めていて、それを保険診療といいます。
保険診療の対象ではない治療を受けた場合、保険を使うことができません。
その場合、患者さんが治療費の全額を負担しなければなりません。
それを自由診療といいます。
オンライン診療はかつて自由診療でした。
クリニックの医師たちが、IT企業が開発したシステムを使い、オンライン診療を始めたのです。
オンライン診療は、公的医療保険の対象にはなっていなかったときから、違法ではありません。
これまでも電話による診療は可能でした。
オンライン診療システムは電話の進化形なので、問題はないわけです。
しかしオンライン診療はそれほど普及しませんでした。
それは自由診療のため、患者さんが治療費の全額を負担しなければならないからです。
3割負担で済む従来の対面式の診療のほうを選ぶ人が多かったからです。
そこでオンライン診療を普及させたいと考えた医師たちは、公的医療保険の対象となるようPR活動に取り組みました。
医師やシステム会社は、オンライン診療の優位性を調査しました。
例えばあるクリニックは、慢性疾患の患者さんの治療継続率を調べました。
すると特定の病気の治療では、通院の手間がかからないオンライン診療を受けている患者さんのほうが、一般的な対面診療を受けている患者さんより、治療を継続する確率が高くなることがわかりました。
慢性疾患の治療は長年同じ薬を飲み続ける必要があるので、治療を継続しやすいオンライン診療は「慢性疾患の治療に適している」といえるようになります。
しかし、医師やシステム会社の実績づくりやエビデンス(証拠や根拠)調査にもかかわらず、オンライン診療の保険診療化はなかなか実現しませんでした。
なぜ公的医療保険の対象外だったのか
オンライン診療が公的医療保険の対象とならなかったのは、厚生労働省が慎重姿勢を崩さず、また、少なくない人数の医師たちが反対していたからです。
オンラインやインターネットやITという、医学的に安全性が確立されていない技術を使って、人の命や健康に関わる診療をすべきではない、という意見が根強かったのです。
反対意見のなかには、患者のなりすましを懸念する声もありました。
病院やクリニックであれば、医師だけでなく、看護師や事務職員も患者さんを確認します。
しかしオンライン診療では医師がパソコンの画面上で患者さんの顔を確認するだけです。
悪意のある人が別の患者になりすました場合、見抜けないかもしれません。
さらに、安易な医療が行われるようになるかもしれない、と警鐘を鳴らす医師もいました。
オンライン診療では、患者はスマホを使って気軽に受診できてしまうので「医師の指示や見解はともかく、とにかく薬だけほしい」という人のニーズに対応できてしまいます。
それで厚生労働省は、オンライン診療を公的医療保険の対象としないだけでなく、オンライン診療を使える範囲を離島やへき地に限定するよう指導していました。
2018年4月から公的医療保険の対象になった
厚生労働省の消極姿勢や一部の医師の反対にもかかわらず、オンライン診療は2018年4月に、公的医療保険の対象となりました。
これが実現したのは、もちろんオンライン診療に携わってきた医師やIT企業たちのお陰なのですが、実は政府も後押ししていました。
厚生労働省も政府の一部ですが、同省は医療の安全を確保する使命があることから、どうしても新しい医療には慎重になりがちです。
しかし政府のなかの内閣府や経済産業省などは、医療のコスト削減と効率化を同時に図ることができるオンライン診療に期待していました。
また、IT技術やインターネット技術を駆使するオンライン診療が拡大すると、産業が活性化します。
そこで、総理大臣が首相官邸でオンライン診療を体験し、それをマスコミに公開する、という「パフォーマンス」も行われました。
つまり政治的な決断でオンライン診療が公的医療保険の対象になった側面もあるのです。
さて、ではオンライン診療は公的医療保険の対象になって、爆発的に普及したのでしょうか。
残念ながら今のところ(記事の執筆時は2019年4月)、それほど拡大していません。
拡大するどころか、クリニックによっては以前よりオンライン診療を使う患者さんが減っているといいます。
それは、公的医療保険の対象になったときの条件が厳しすぎて、かえって医療現場で使いづらくなってしまったからです。
公的医療保険の対象になってかえって使いづらくなった?
公的医療保険でオンライン診療を行う場合、半年間待たなければならないルールが課せられました。
つまりすべての患者さんは、最初の受診時(初診時)は対面診療を受けなければならないのです。
必ずクリニックに足を運ばなければならないのです。
そして、初診時だけでなく、初診時から半年間は対面診療を継続しなければなりません。
そして半年が経過して初めて、オンライン診療を受けることができるのです。
つまり、初診時から半年以内に病気やケガが治れば(それはよいことなのですが)、オンライン診療を受けることができないのです。
また、オンライン診療を提供する医師は、対面診療を行った医師に限定されます。
これは、患者のなりすましを防ぐためだけでなく、患者さんと医師が対面診療を半年間継続して信頼関係をしっかり築いてからオンライン診療に移行させるためでもあります。
しかしこのルールによって、オンライン診療を行っているクリニックを受診したとしても、オンライン診療を行っていない医師にかかった患者は、半年後でもオンライン診療を受けることができません。
例えば、高齢の医師と若い医師の2人がいるクリニックで、若い医師しかオンライン診療を行ってなく、高齢の医師はインターネットの操作が苦手でオンライン診療を行っていなかったとします。
この場合、高齢の医師の患者は、半年後でもオンライン診療を受けることができません。
そしてこのデメリットが最も大きいのかもしれませんが、オンライン診療を実施できる病気が限定されてしまいました。
オンライン診療で治療できるのは生活習慣病や難病などだけになりました。
皮膚疾患は対象外ですので、アトピー性皮膚炎の患者さんや水虫(白癬、はくせん)の患者さんはオンライン診療を受けることができません。
しかも大学病院の皮膚科の教授や皮膚科の専門医たちで構成する日本皮膚科学会は「皮膚疾患診療における安易な遠隔診療(オンライン診療のこと)は誤診や重大な疾患の見落としなどの危険性をはらんでいる」として、今後も皮膚疾患をオンライン診療の対象にしないよう求めています。
そのほか、精神科や小児科の治療もオンライン診療の対象から外れています。
ただ、こうした強すぎる規制に反発する声も挙がっているため、厚生労働省は早くもオンライン診療のルールを見直す姿勢を打ち出しています。
したがってオンライン診療のルールはまだしばらく定着しないかもしれません。
まとめ~使いやすさも重視して
厚生労働省のオンライン診療に対する慎重姿勢は、当然かもしれません。
新しい医療を大々的にスタートさせて医療事故が起きたら、被害を受けるのは国民です。
そして同省も強く批判されるでしょう。
しかしオンライン診療で使われているIT技術とインターネット技術は、とても便利ですし、運用面でも安定しています。
しかも日本の医療費は毎年1兆円ずつ上がり、2017年には42兆円になりました。
オンライン診療はコストダウンが可能な医療形態なので、国の財政や公的医療保険制度の財政に貢献できるはずです。
したがって、オンライン診療の安全性が確認できたら、速やかに使いやすい制度にしていただきたいところです。
当クリニックのED・AGA・肥満治療はオンライン診療が可能です。
料金設定も「予約料500円+お薬の送料一律500円+お薬代」のみとなっております。
厚生労働省の告知に基づき、当クリニックでの初診は来院で受診して頂いた上で、
再診時よりオンライン診療による受診が可能となります。
新橋ファーストクリニック診療科目