記事リリース日:2019年7月12日 / 最終更新日:2019年7月12日
オンライン診療は、患者さんと医師をインターネットのテレビ電話システムでつなぐ医療です。
厚生労働省は今、オンライン診療の見直しに着手していて、2019年3月には「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」が開かれました。
オンライン診療は2018年4月に公的医療保険の対象になって本格稼働しましたが課題があることがわかったからです。
その課題のひとつに、訪問看護師とオンライン診療をどのように連携させていくか、というものがあります。
医師と患者の間で行われるオンライン診療は、DtoP(ドクターとペイシャント(患者))と呼ばれます。
ここに看護師が加わるとDtoPwithN(ドクターとペイシャントとナース(看護師))になります。
DtoPwithN型のオンライン診療にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
訪問看護師のオンライン診療への「本格参加」について考えていきます。
訪問看護とは、訪問看護師の課題とは
DtoPwithN型オンライン診療を解説する前に、そもそも訪問看護とはどのようなものなのか紹介します。
訪問看護は医療保険制度のなかの仕組みでもありますが、介護保険制度にも組み込まれています。医師の治療までは必要ないが、介護職員だけでは心もとない高齢の患者さん宅に、訪問看護師を派遣します。
訪問看護師は、訪問看護ステーションに属します。訪問看護ステーションは病院やクリニックが運営することもありますが、看護師が起業して会社をつくって訪問看護ステーションを設立することもあります。
訪問看護師は自身で在宅患者さんをケアするだけでなく、介護職員や患者さんの家族に医療的なケアを指導することもあります。在宅介護のリーダー的な存在になっている訪問看護師も少なくありません。
介護職員や家族も、医療のプロである訪問看護師さんがついていると安心できます。
訪問看護師は、在宅の患者さんが1日でも長く自宅ですごせるようお世話をします。
そして患者さんと家族は、訪問看護師の力を借りれば、患者さんが急変してもそのまま自宅で亡くなることを選択できます。
急変して救急車で病院に運ばれても、結局短期間で亡くなってしまうのであれば、仮に死亡時期が少し早まったとしても自宅でお看取りしたほうが患者さん自身にとって「幸せなこと」になるかもしれません。
平穏な死を実現できることは患者さんや高齢者本人だけでなく、家族の願いでもあります。訪問看護師は平穏な死を実現するためのキーパーソンになります。
訪問看護師の「本格参加」の意義とは
訪問看護師がオンライン診療に加わると、どのような「よいこと」を期待できるのでしょうか。
ITとネットの技術をふんだんに使っていることはオンライン診療の最大の長所ですが、高齢者がスマートフォンやタブレットの操作に困るというデメリットにもなっています。
そして在宅医療では、高齢者が高齢者を介護する老々介護が問題になっています。老々世帯の場合、患者さん自身のみならず家族もオンライン診療用の専用端末の操作を苦手にします。
この老々世帯が訪問看護を使っていれば、訪問看護師にスマホやタブレットの操作を支援してもらえます。
訪問看護師がオンライン診療の端末を操作するようになると「副産物」が生まれます。そしてこの副産物こそ、DtoPwithN型オンライン診療の最大のメリットかもしれません。
スマホやタブレットには、オンライン診療をしている医師が映っています。
医師はテレビ電話システムを使って、スマホやオンラインの画面からライブで医療的な指示を出します。
訪問看護師が端末を操作していれば、医師は訪問看護師に医療的な処置の実行を依頼することができます。
訪問看護師がテレビ電話で医師から直接指示を受ければ、在宅患者さん本人やその家族や介護職員が実行するより、安全かつ確実にケアできます。
またDtoPwithN型オンライン診療は、訪問看護師にもメリットをもたらします。それは、医師の見解を直接聞けることです。
オンライン診療を行っている医師と訪問看護師が、別の組織に属していることは珍しくありません。
そしてそれぞれが自分の考えで在宅患者さんをケアしています。
訪問看護師がオンライン診療に加わると、医師の考え方を理解できるようになります。
また、オンライン診療の医師に対して、訪問看護師のほうから要望を出したり改善を提案したりすることができます。当然医師も、訪問看護師に要望したり改善を依頼したりできます。
広がるDtoPwithNの可能性
オンライン診療に看護師が加わると「できること」が拡大します。
厚労省の会議「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」では次の内容が提案されました。
●医師と訪問看護師とで事前に連携を取り合うことができるのではないか
●所属機関が異なる場合には、患者の同意の上で、医師が訪問看護師に「患者の病状などの情報」を事前に共有することができるのではないか
ひとつずつみていきましょう。
医師と訪問看護師の事前の連携
在宅患者さんや在宅の介護高齢者は、自分たちで医師や訪問看護師や介護職員を選ぶことができます。
したがって、A病院の医師を主治医にして、B訪問看護ステーションから訪問看護師に来てもらい、C介護事業所に介護職員を派遣してもらうこともできます。
この場合、医師も訪問看護師も介護職員も別組織に属しているので、1人の患者さんをみることになるのに、連携が取りづらくなります。
そこでDtoPwithNのオンライン診療をスムーズに進めるには、医師や訪問看護師や介護職員が事前に連携することが求められます。
この事前連携は、たまたま1人の患者さんをケアすることになったときに関係者が集まることもできますが、普段から勉強会などを通じてコミュニケーションを深めていくことも大切です。
医師と訪問看護師の「患者の病状などの情報」の事前共有
医師と訪問看護師の所属先が異なるとき、ケアにおいて大きな支障になるのが患者さんの病状などの情報の共有です。
例えば医師が、ある女性の在宅患者さんについて「夫と息子が交通事故で死亡したことでうつ病を発症した」という情報を持っていたとします。
その後、この在宅患者さんが訪問看護ステーションに訪問看護師を依頼した場合、医師は「どこまで患者情報を訪問看護師に伝えるべきか」で悩むでしょう。
抗うつ剤などを処方していれば、訪問看護師が薬の管理をしなければならないので、在宅患者さんがうつ病を発症していることは訪問看護師に伝えなければなりません。この点はあまり問題にならないでしょう。
しかし、「夫と息子が交通事故死したこと」は、医師は訪問看護師に伝えるべきでしょうか。
もし伝えなければ、訪問看護師はその在宅患者さんに、家族について尋ねるでしょう。
それを話すことは、在宅患者さんとってつらいことになるかもしれません。
しかし、医師には守秘義務があるので、患者さんの家族の死亡原因を口外することは許されません。
相手が訪問看護師であっても別組織の人に患者さんの重大情報を伝える必要があるときは、特別なルールが必要になります。
そこでDtoPwithNのオンライン診療では、患者さんや家族の許可を取ったうえで、医師と訪問看護師が患者さんの情報を事前に交換する必要があります。
患者さん情報を一定のルールのもとで共有することで、重要なプライベート情報を守ると同時に、手厚いケアを実施することができます。
まとめ~訪問看護師を加えない理由はない
オンライン診療に訪問看護師を加えない理由はないでしょう。
オンライン診療は、患者さんと医師との間で結ばれた「契約」に基づいて行われるので、別組織である訪問看護ステーションの訪問看護師を「仲間」に加えるには課題もあります。
しかしその課題はクリアするべきですし、厚労省もそれが望ましいと考えているようです。
それは厚労省が「DtoPwithN型オンライン診療」を構想していることからも明らかです。
オンライン診療は訪問看護師が本格参加することで、さらにケア能力を高めることになるでしょう。
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厚生労働省の告知に基づき、当クリニックでの初診は来院で受診して頂いた上で、
再診時よりオンライン診療による受診が可能となります。
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