Telemedicine Report
記事リリース日:2017年11月21日 / 最終更新日:2019年1月18日
インターネット検索でおなじみのYahoo!が2016年10月に始めたかんたん医療相談は、24時間いつでも医師に相談できるネットサービスです。
医師に相談できるサイトは他社も出していますが、Yahoo!のユニークさはその規模でしょう。何しろ日本最大のポータルサイトが手掛けているのですから。
ただ、医療を補完する機能とまではいっていないようです。
【かんたん医療相談】https://medical.yahoo.co.jp/soudan/
目次
かんたん医療相談の仕組みはこうです。
まずは専用サイトを開き、氏名や住所、電話番号などの個人情報を入力し登録します。利用料は月額324円(税込)で、支払いはクレジットカードまたは銀行口座からの引き落としになります。
あとはパソコンやスマホにアプリをダウンロードすれば、すぐに使うことができます。
かんたん医療相談の料金プランのページ
利用者が健康や医療に関する不安や疑問を文章で打ち込むと、それを読んだ医師がやはり文章で回答してくれます。
ネット掲示板と似ているかもしれません。質問を書き込むと誰かが回答してくれる、という仕組みは同じです。
また、Yahoo!知恵袋を利用したことがある方であれば、さらにイメージしやすいと思います。知恵袋やネット掲示板の場合、病気のことを質問しても、必ずしも医師が回答してくれるとは限りませんので、回答の信頼性は限定的でした。
一方かんたん医療相談は、医師しか回答しません。かんたん医療相談に登録している医師は4,500人で、ほぼすべての医療分野を網羅しています。
この圧倒的な医師数が、かんたん医療相談の魅力でしょう。
アプリ上に書き込むわけですから、24時間いつでも質問を受け付けしてくれます。
質問回数は1人あたり月3回までとなっていますが、ほかの人がした質問とそれに対する医師の回答は無制限で閲覧することができます。
質問内容はアプリ上に公開されますが、質問者の氏名などの個人情報は秘匿されます。
かんたん医療相談のサービスの概念図
質問内容は多岐にわたります。
「喉に何かがひっかかったような感じが続いています。耳鼻科で診てもらいましたが、異常なしとのことでした」
「男性の更年期について教えてください。何歳くらいから発症しますか。そろそろ病院に行ったほうがいい、というレベルを教えてください」
「3歳の娘に関する質問です。39度の高熱が2日間続きましたが、3日目には落ち着きました。その後、お腹と背中に赤くて細い発疹が出てきました。発熱と関係があるのでしょうか」
このように質問に対し医師が「○○の病気が疑われます、△△科への受診をおすすめします」などと返信するわけです。
動画や画像のサービスはありません。
かんたん医療相談のサイトには、病気や不安内容のカテゴリが紹介されています。
このサイトの可能性の大きさを示すものですので、長くなるのですがすべてを紹介してみます。
かんたん医療相談の「相談を探す」内のカテゴリ項目
インフルエンザやアトピー、うつといった多くの人が気になる病気だけでなく、がんや認知症といった深刻な医療についても受け付けています。
また、口臭、性病、薄毛、生理などの、軽症のうちは病院にかかるのをためらってしまうような、多くの人にとってデリケートに感じる症状なども相談できます。
健康番組というカテゴリは、いかにも現代的です。「テレビであんなこと言っていたけど、本当なの?」という疑問は、誰しも1度は感じたことがあるのではないでしょうか。
大規模災害が発生すると、エコノミー症候群や医療不足が深刻になります。そのため災害というメニューも表示されています。
手軽で便利、さらに頼もしさまで備わっているYahoo!のかんたん医療相談ですが、しかしまだまだ医療そのものはもちろんのこと医療の補完にも達していないというのが実情のようです。
Yahoo!自身が「医師からの回答があることを保証するものではありません」と述べているのです。
これは、月額324円を支払っている登録者が質問をしても、100%回答が返ってくるとは限らないと言っているのです。
4,500人の医師が一斉に無視するケースは考えにくいのですが、ただ、深刻な症状かつ重篤化する可能性がある病気の場合、医師としてはネットで気軽にアドバイスすることに慎重にならざるを得ないでしょう。
さらにYahoo!は「診療行為またはこれに準ずる行為を目的として利用することはできません」と述べています。
これには2つの意味が含まれます。
1つ目は、かんたん医療相談の質問者に対し、診療行為を受ける目的で利用しないでと呼びかけているのです。
つまり医師からの回答は、診療行為としての医師のアドバイスではなく、医療的な雑談としての医師のアドバイスという位置づけであるということです。
例えばかんたん医療相談の医師から「その症状なら放置しておいてもいいでしょう」という回答があって、その通り放置して悪化しても、Yahoo!側は責任は負えないということです。
もうひとつの意味は、かんたん医療相談は「医行為(いこうい)」ではないというお断りです。
診療行為や医療などは、法律上は医行為と呼ばれ医師法などで厳しく規制されています。医行為を行うには、厚生労働省や保健所の厳しい審査をパスしなければならないのです。
かんたん医療相談はもちろん違法ではないものの、医療行政の厳しい審査を受けた医行為としての営業ではないのです。
そのためかんたん医療相談は医行為ではありませんので、医師から処方せんを受けることも、医療用医薬品を受け取ることもできません。
このサービスのポイントは、必ず医師が回答するということです。過去には、医師ではない人が書いた、いい加減な医療記事を掲載したサイトが閉鎖に追い込まれたこともありましたが、かんたん医療相談にはその心配がないのです。
ただ、確かに現段階ではYahoo!かんたん医療相談には限界がありますが、この金額で、どの病気についても医師の見解を聞けるというのは、魅力的なサービスであることは間違いありません。
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